「新学期」

「結局三年間一緒のクラスだねー」
「サヨちゃん!いやー嬉しいよ!」

新学期。ついに三年生になった私は今年も名前と同じクラスを引き当てた。まだ慣れないこの教室に、なんだかそわそわしてしまう。

「でも残念だね、荒北君と離れて」
「べ…別に?うるさい奴がいなくて授業が捗る」

大きな態度で椅子に座って足を組む名前。私の前ですら素直じゃない名前は本当に分かりやすいと思う。三年生から理系と文系に分かれて別々の塔に移動するので、名前が荒北君と会うことは今までより断然少なくなってしまう。

「あ、そういえば自転車部のインターハイ、箱根であるんだってね」
「え。そうなの?」

本当に荒北君から何も聞かされてないんだ…。今年は三年生だから、きっと出場するんじゃないかな。そう言うと何やら頭を抱えて悩み始めてしまった。

「…どうしたの?」
「いや、どうしようと思って」
「え」
「荒北…レース出れるのかな、なんか練習頑張ってたからさ、きっとメンバーだとは思うんだけど」

もし…違ったら。そっか。なんて言葉を掛けていいのか迷っているんだ。名前なりに気を遣っているのだろう。そんな名前をなんとか応援してあげたくて、一肌脱ごうと決意した。


「荒北君」

足を運んでわざわざ理系塔まで来てしまった。男子ばかりの教室に入るのは本当に気まずい。周りの視線を感じながらも相変わらず目つきの悪い荒北君に話しかけた。

「あ?…おーお前、苗字の」
「友達出来た?」

余計なお世話だヨ!と罵られてしまった。この調子じゃきっと出来てないんだろうな。

「荒北君、今年のインターハイ、出るの?」
「…お前見かけによらず直球だな」
「で、出るの?出ないの?」

…出るヨ、と小さい声が確かに聞こえた。良かった。おめでとう、と小さく拍手すると疑いの目で見られる。

「苗字がなんか言ってたのか?」
「ううん、別に」
「フーン」
「あ、でもクラス離れて寂しいって言ってたよ」

からかうつもりでそう言ったら、一気に顔が赤くなった。え、冗談だったんだけど。いや、ウソ言ったわけではないけど。

「ハァア?!別に、うるせェ奴がいなくなって授業捗るしィ、俺は寂しくなんかねェヨ」

ハッ、と鼻で笑う荒北君に、そうだね。とだけ返事して教室に戻った。全く、似たもの同士とはこのことだ。教室に着くと机に突っ伏したままの名前がいて少し笑ってしまった。名前。声を掛けるとすごい勢いで顔を上げられた。

「荒北君、インターハイ出るって」

その言葉に明るくなる名前の表情に、私もつられて嬉しくなった。



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