「認めたくない恋」

福チャンと出会って自転車競技部に入ってからは、服装や髪型は直した。最初こそは言うこと聞かずに好き勝手やってきたが、ロードの練習に取り組むためには避けては通れぬ事だった。

「何、今日雪でも降るんじゃない?」

そう言って女子にしては少し乱暴に机に鞄を置くと、ツンツンと俺を指差してきた。

「人を指差すんじゃねェよ苗字。」
「部活、入るんだって?髪型も服装もキチンとしちゃって」
「うっせェヨ!似合わねーって言いたいわけェ?」
「…いや別に、見慣れないだけだし」

苗字名前。中学時代、俺の隣の中学で有名な不良グループと連んでいるような所謂ヤンキーだった。この女も今では髪型と服装だけではソレとは想像し難い。高校に入学して更生したらしいが、話してみるとそこらの女子より男らしいというかガサツである。

「お前だって中学の時と全然違ェじゃねーの?」
「うるさいな、昔の事口にすんな!荒北、あんただって最近まで原チャぶっ飛ばして騒いでたじゃん」
「あ、あァん?あれは…昔の話だ」
「最近でしょうが」

俺らが反発するのは今に始まった事ではない。ほぼ毎日、こうやってくだらないやり取りばかりで周りの奴らはすっかりドン引いてしまっている。そこにすかさず、苗字と仲の良い女子が止めに入って何とか落ち着くわけだが、まぁ何つーかこいつと真反対の大人しくていかにも女子、て感じの奴だ。

「名前、やめなよー…」
「ごめんねーサヨちゃん、恐がらせちゃって。はい、もうやめたー」

俺に向ける敵対心とは打って変わって、女友達には満面の笑顔を向ける。チ、と舌打ちするとジロリと睨まれて中指を立てられた。あ…ンのやろう…!ふと後ろから肩を叩かれたので振り向くと日直日誌を渡された。ンだよ、面倒くせェ。しかも苗字とじゃねーか。あーダリ。苗字に伝えると、乱暴に日誌を奪われた。

「あたしやっとくわ。荒北となんかとやりたくないし」
「おーおー好き勝手言ってくれんじゃナァイ?」
「だから部活行きな。ほらしっしっ」

マジかよ。もしかして俺に早く部活行かせてくれようとしてんの?困るんだヨ、そういう事されると。俺はドカッと机に座ると「お前一人じゃ信用出来ねェヨ」と言って苗字の日誌を奪った。あっそ、と素っ気ない返事をしたわりには嬉しそうな顔をしている気がする。…どういう顔だよそれは。困るんだよなァ、よりによってこのガサツ女を好きになっちまったんだから。黒板の文字を消す苗字を見ながら、やり直しで明日も日直ならねーかなとか不真面目な事を考えていた。

'140220 pike
'140714 加筆修正


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