「果たし状」

「苗字さんと付き合っているとは本当か?!」

ロードの途中で東堂が耳元で叫んできた。るっせーよ!耳元で叫ぶな、耳壊れっからよォ。そう言うと否定はしないんだな、と新開も湧いてきた。…まぁな。ウソじゃねーし。

「どっちから告白したんだ?」
「多分、俺」
「なんだ、その多分とは!」

いや、俺が先に言った筈なんだけど。勢いはあっちのほうがあったっつーかその、アレだ。まぁそんな感じだ。

「む。はっきり言ってくれんと分からんぞ荒北!」
「詳しく聞かせろよ」
「…るっせ!ついてくんなヨ!面倒だからァ!」


苗字と付き合いはじめた。っていうかアイツ俺の事好きだったのかヨ。全っ然そんな風じゃなかったじゃナァイ?
あの日、偶然教室に忘れ物して良かった。忘れ物を取りに教室に戻ると、苗字が大声で俺を好きだって叫んでた。別に聞くつもりなかったんだけどヨ。聞いてないフリをしようか迷ったが、隠し事ができない俺にはまぁ無理だった。今思うとなるべくしてなったのかもなァ。こうやって苗字と付き合えたんだし結果オーライ、てやつだ。


「あ。荒北」
「…よォ、ブス」

次の日。学校に着くと下駄箱前で苗字とばったり出会した。いつも通り暴言を吐くと向こうも負けずに言い返してくる。おー今日も元気そうで何よりだ。ふと苗字が開けた下駄箱の中から一枚の紙がヒラヒラと落ちたのに目が行った。苗字は気付いてないようだ。

「なんか落ちたぞ」
「…え?何…果たし状?ブフッ」

腹を抱えて笑っている苗字をよそに俺は教室に向かった。後ろから苗字が手紙を開きながらついてくる。

「昼休み屋上に来い…だって荒北」
「いや、お前だろ。愛の告白かもなァ…名前チャン?」

わざと意地悪く言ってみると顔を真っ赤にして怒鳴られた。なんでそんなマジになってんのォ?

「名前で呼ばれた…」
「あ?なんか言ったか?」
「うえ、別に!」
「ふーん、ソレどうせ行かねーんだろ」
「え、行くよ。だって呼ばれてるし」
「…やめとけヨ」
「えーなんでー」

なんでってそりゃ、どこの誰かも知らねェ奴に呼ばれてハイ何ですかって行く人いるかヨ!そう言っても聞く耳持たない苗字は「本当に愛の告白かもしれないじゃん」とか言ってた。…尚更なんですけどォ。結局、昼休みになると気付いたらいなくなっていた。行ったんだろな。なんだかとても嫌な予感がする。柄にもなく心配しながら、とりあえず飯誘いに福チャンの教室に向かった。


'140306 pike


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