「サヨちゃんと電話」

全てのものをなぎ払うつもりで全力疾走で家に帰った。その間10分。非常に良いタイムだ。玄関に靴を脱ぎ捨てるとそのまま手も洗わずに部屋にこもった。遠くで怒鳴る母の声が聞こえる。ごめん、後できちんと揃えるから、靴。

ベッドに倒れこんで完全に上がった息を整える。ああ、もう嫌だ…。なんでこんな事になったんだろう。そのまま小一時間ずっと自己嫌悪に浸っていると、突然ケータイが鳴り始めた。…サヨちゃんだ。あたしは無視する権利もないまま恐る恐る電話に出た。

「も、もしもし…。」
「名前!よかった、出てくれて。」
「そんな、無視する理由もないしぃ」

何秒か沈黙が続いた。気まずい。ただその一言。

「あ、あの。」
「あのさ」

言葉が重なって譲り合う。こんな時は決まってサヨちゃんが遠慮するから結局あたしがから喋り出した。

「ごめんね、黙ってて。ずっと言えなかったんだよね。」
「…私も言えなかったんだ、名前に。」
「なんで?」
「だって荒北君名前の事大好きなんだもん」
「…何故そうなる」
「あんな態度もさ、いきすぎると好きって言ってるようなもんだよ。」
「イミガワカラナイ。それはないない絶対」
「ある!だって私荒北君好きだったから!見てたから分かる!」
「(…だった?)そ、そうなの。」
「うん、私は失恋しちゃったけど、また違う人見つけるから!名前は私の事構わないで!」
「いや…でもまだサヨちゃん失恋したってワケじゃ…」
「したの!絶対したの!」
「そ、そうなの。」
「だから、ごめんね、なんて言わないでね。一番、傷付いちゃうから…」
「サヨちゃん。」
「大丈夫、私結構モテるし!男の子なんていっぱいいるし!」
「サヨちゃん、…ありがとう。」
「…うん。」
「あたし荒北の事好きだけど、サヨちゃんはもっと好きだ。」
「名前…。」
「ありがとう、また明日ね。」
「うん、おやすみ!」

プツ、と電話を切るとごめんね、って一回だけ呟いた。サヨちゃんが今どんな顔しているかは見えないけど、多分、たくさん泣いてると思う。

ひとまず落ち着いて玄関に靴を揃えに行くとすでにキチンと揃えられていた。ふと荒北に告白してしまったことを思い出して再び学校が滅びるのを心から祈った。


'140227 pike
もう感動通り越してギャグと捉えてもらえればと。


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