「予定外の告白」

ここのとこずっと荒北と話してない。薄々気付いているみたいで、何回かちょっかい掛けられたけど今日は一言も話してない。席、隣なのに。いっそのこと荒北とサヨちゃんがくっ付いてくれれば、この恋も諦められるんだろうけど、現状ではただ我慢するだけの正直キツイ日々だった。

「荒北君。」

すぐ近くであいつの名前を呼ぶサヨちゃんの声が聞こえた。…あ?だって、あたしよりずっと柔らかい声で返事して。荒北もサヨちゃんの事好きなんじゃないの。なら早く付き合ってくれないかな、本当に見てて苛々するしモヤモヤもするし何より心が痛い。

「…つーか苗字お前何で俺の事避けてんだヨ。嫌われるようなことした覚えねーんだけどォ?」
「はぁ?今まで数え切れないほどアンタから喧嘩ふっかけられてんだけど。」
「喧嘩ふっかけてんのはお前だろ!」
「あーハイハイ、分かったから。もうあたしに話しかけないでくれる?」

そう言うとチッ、と舌打ちが返ってきた。ズカズカと大股で教室の外へ出て行ったのを見て、周りの人間が怯えている。…本当はそんな悪い奴じゃないのにな。ごめんね、と呟いたその声は誰にも聞かれてないと思う。

放課後。荒北がいつも通り足早に部活へ向かった。サヨちゃん、帰ろ。そういうと申し訳なさそうな顔で返事をされた。…やめてよ、なんでそんな顔するの。

「ごめんね、名前。」
「んー何がぁ?」
「名前が荒北君に冷たくしてるの、私が原因だよね。」
「だって」

サヨちゃん、荒北のこと好きなんでしょ?じゃああたしが協力するのは当たりじゃん。謝る必要なんてないよ。それに、あたしは別に荒北のこと何とも思ってないし!と笑い飛ばすとサヨちゃんも一緒になって微笑んでくれた。

「うん、そうそう、誰があんな奴のこと…」

そこまで言うと堪えることができなかった。アレ?なんであたし泣いてるの。慌てるサヨちゃんを目の前にして、ボロボロと涙は止まってくれない。そうだ。これ以上この子に嘘つけない。怖がって近寄ってくれない周りの女の子とは違って唯一仲良くしてくれるサヨちゃんだから。自分を偽ることができなかった。

「ごめんサヨちゃん、」
「う、うん!どうしたの?」
「あたし、荒北の事好きなんだ。」

ずずっと鼻水をすすりながら言うとサヨちゃんはびっくりしていた。そりゃそうか。なんだか言葉にしてみたらスッキリしたのでもう一度声を張って言った。

「あたし!荒北が大好きで!!」
「…名前、後ろ…。」
「…んぇ?」

振り返ると教室のドア付近に突っ立っていた荒北の姿があった。え、何でお前部活行ったんじゃねーの?何でいるの?状況が掴めないでいると「プリント置きっ放しなの忘れててよ、取りきたァ。」と。それよりも、聞かれた?今の。まさか。荒北とバチッと目が合うとアーとか言いながら目を逸らされた。

「う、うわあああああん!!!」

後ろのほうでサヨちゃんがあたしの名前を叫んでいるけどそんな事お構いなしに、あたしは教室の外へ飛び出した。最悪だ。あたしは一気に二人も失ってしまった。サヨちゃんと荒北。この日ほど、明日になれば学校なくなってればいいのにと本気で願った日はなかった。


'140227 pike


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