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遠くからでもよく見えるあなたの背中
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時おり、ふっと思い出しては笑ってしまうことばかり。
秀星とはそんな人だった。
おちゃらけた中に強さがあって、本当は寂しいひとだってこともよく分かっていた。
わたしたちは惹かれあっていたのだ。遠い昔に。
「アンタさあ、男と話すとき、すっごいつまんなそうな顔してるよね。どうして?」
「してるかな」
「してるしてる。一番つまんなそうなのはギノさんと話してるときかな。やべえよ、あれは」
「縢と話しているときは?わたし、退屈そう?」
「んー、どうかな。それって俺次第ってコト?」
「んー、どうかな?でもきっと、楽しいと思う」
「何だよ、それ」
はじめてまともに言葉を交わしたとき、秀星は笑ってくれた。
その笑顔をぼんやりと眺めながら、この人はどうして分かるのだろう? そう思ったのを覚えてる。
男のひとが苦手なのだ。とくに年上の男性が。わたしの犯罪係数の高さには年上の異性とのトラウマが関係している。
その事は誰も知らない筈なのに。
秀星の存在を意識し始めたのはそれからだ。
年齢が近いからすぐに仲良くなった。
照れ隠しに、一度だけ抱き付いたことがあった。それから一緒にコウちゃんに怒られた。
秀星のゲーム機を借りてオンライン対戦をした。
弥生ちゃんと三人で、顔を寄せあってカタログを眺めた。
ツーショットを撮る撮らないで喧嘩になった。
必死に背伸びした、感情をぶつけ合うかのような恋だったのだ。
忘れられるわけがなかった。大切で愛おしかった。
誰にも秘密でひっそりと拝借した、小さな瓶に閉じ込められたままのオレンジに触れる。
これはサプリの代用品だった。荒くれた心はすでに凪いでいる。
当時、メンタルケアを担当する先生にも褒められたのだ。「それはよい方法ですよ」と。
宜野座さんにもコツを教えてあげられたら良かったのにと本気で思う。カウンセラーに転職しようかと思ったほどだ。
秀星は、記憶のなかで穏やかで優しく呼吸をしている。
喧嘩も沢山したけれど、その倍沢山幸せな瞬間があったから、寂しくなんてないのよ。
小瓶を振ればカラリと心地よい音が鳴る。
その音は秀星の笑顔と笑い声によく似ていた。
遠くからでもよく見えるあなたの背中
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「ハウンドフォーの苦悩」ヒロインちゃんです!記念写真のお話は、いつかまた書けたらいいなと思っています。
ただただ、わたしの愛が詰まっただけのお話でした。@拍手お礼文(?~20150524)
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