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07.他の誰でも無いの



月島君の行きたがっていたスイパラに着いた、とはいえ私達はどちらも待ち合わせ時間より30分も前に着いてしまったからまだ開店はしていなかった。
スイパラの前には期間限定商品の紹介とか色々なスイーツの写真があった。
「うわー、美味しそうだね」
指をさすと月島君が頷いた。なんだかいつもよりうずうずしている感じがした。月島君ってショートケーキが好きなんだっけ。可愛いな、と思いながら月島君を見ると「何」と睨まれる。そんなふうに睨んでも今は可愛いだけだと思って「何でも無いよ」といつもはできない余裕な笑みを浮かべて見せた。
そうすれば月島君は不機嫌そうに眉を顰める。
「月島君って可愛いよね」
そう言ったら月島君は次こそ本気で睨んできたので私は大人しくすることにした。

開店時刻になって早く来てたおかげですぐ入店することができた。最初のほうに入ったおかげでケーキなどが綺麗に並べてあった。それを見ると私も月島君もうずうずしてしょうがなかった。私達はすぐにお皿を取って自分の食べたいものをお皿の上に乗せていった。
席に着くと、自分が必死になって気付かなかったのだが月島君はケーキが好きな割りにあまりお皿にケーキを乗せていなかった。むしろ少ないと思う。それの反対で私はお皿に乗せられるだけ乗せてみた、という大量である。彼氏より多いって、恥ずかしい……。
月島君は私のお皿をじっと見る。
「……何、月島君」
「たくさん食べるんだなって」
やっぱり思われてるよなと私は月島君から目を逸らす。このお皿に乗った分を時間をかけて食べようかなんて考える。そうして私はケーキを口に運ぶ。
「…………」
無言で食べていると月島君が私のことをずっと見ていることに気付く。彼のお皿からは何も減っていない。
「どうしたの?食べないの」
「いや、苗字の食べ方がさ口が大きく開いてて、女子っぽくないけど苗字っぽくて可愛いなって思った
そう言って月島君は少しだけ微笑んだ。その笑顔にどきっとした。そして胸がぎゅっとした。
「僕もそろそろ食べようかな」
月島君もケーキを口に運ぶ。それは礼儀正しい感じだった。小さく口を開いている。
私って月島君より女子力低いしけっこう雑なのかもしれない。少しだけショック。
「苗字食べないの?」
しかし月島君がさっき私っぽいって言ってくれたのが嬉しかった。
私は「食べる」と言ってまたケーキを口に運び始めた。
胸がなんだか締められるような感じがして、顔が火照ってきた。
それが恥ずかしくて、早く消したくて私はとにかくたくさんのものを口に詰め込んでどんどん飲み込んでいった。
最初、お皿に入れた分が無くなるのは大して時間がかからなくって月島君を見ると月島君のお皿は半分ほどしか減っていなかった。
本当に私の女子力……。
「……おかわり行ってくる」
私は立ち上がって空になったお皿を持つ。月島君がケーキを食べながら立ち上がる私を上目遣いで見る。
「行ってらっしゃい」
そう言ってまたケーキを食べる月島君。
「行ってきます」
小さく呟いて赤くなる頬と早く打っている胸を消そうと私はまたたくさんケーキを取る。そして一気に食べる。
そうやって早く食べても全然、胸の高鳴りは無くならない。
結局、私が3皿目を取るのと同時に月島君は2皿目を取りに行っていました。



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