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08.本当に優しいんだから



スイパラの時間制限が来て、私達のお腹もいっぱいになったところでお店を出た。
正直、私はまだまだ食べられたと思う。月島君は途中からずっと同じケーキをちびちびとしか食べていなかったけど。
「美味しかったー」
「そうだね」
時刻はもう12時近かった。
「よし月島君の家、行こう!」
「……もう行くの」
月島君は溜息をつく。
「だって午後は月島君の家ってお話ししたでしょ。それと、キスも、ね」
自分で言うのは少し恥ずかしくて、照れてると月島君は口を一瞬閉じてから一言。
「そういえば、このデートって君が僕にキスするためのものだったね。忘れてた」
「え」
「思い出させてくれてありがとう」
月島君はそう言うと、すごく、良い笑顔を見せてくれた。うわあ、眩しい……。この顔が見れたのは嬉しいのだが、忘れていたのならそのまま忘れていてほしかった。
「僕、不思議だったんだ。いつもキスしてよ、ってしつこいくらい言ってくる苗字が全く今日は言わないから」
「うっ……」
そんな私、普段キスしてなんて言ってるかな。確かにキスは好きだけどそうやって言われるとなんだか恥ずかしくなる。
「苗字は、早くキスしたいんでしょ?じゃあ早く僕の家行かないとね」
僕って本当優しいね、と意地悪く笑って月島君は私の手をさりげなく握って引っ張った。その握り方の、優しいこと。その瞬間、どきっとして、鼓動が速まった気がした。
意地悪でもやっぱりこういうとこ好きだな。なんかいつも意地悪いくせに優しいんだから。うん、やっぱり可愛い。
私が頬を緩めると月島君はそれに気付いて手を思いっきり強く握ってきた。
「いたい、いたい!月島君、ストップ!!」
私がそう騒ぐと月島君はぱっと手を離す。
「え、何?どしたの」
「いや、君が失礼なこと考えてそうだなって」
何でわかったの、月島君……。
「あ、図星だね。今、そういう顔してた」
「え、どういう顔?」
私が聞けば、月島君はふっと鼻で笑ってわからなくていいよ、って言う。
「なんで?わかんないと月島君にこれからも馬鹿にされるっ……」
そう、いつだって月島君は私の心の中を読み取っては意地悪く、楽しそうに笑うのだ。そういうところももちろん好きなのだがどうせならもっと優しめに笑ってほしいものだ。
「苗字はわからなくていい」
月島君はもう一度そう言うと、口元を緩めた。これだ、私の一番好きなたまに見せる月島君の優しい笑顔は。
「そうやって素直なのは可愛いよ」
ああ、また鼓動が速まる。
それを月島君は見透かしたかのようにまた意地悪な笑顔になる。そんなのも好き。
「本当、わかりやすくて面白い」
月島君はそう言うとまたさりげなく、手を重ねてきた。私がその手を握れば月島君は優しく握るから、嬉しくて、恥ずかしくて。顔に熱が集まった。


 

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