05.5
海神さん(友人)と岩ちゃんのお話。海神さん視点
 
今の告白だったな、絶対。私は一人で歩く帰り道、そんなことを思っていた。先ほど、一緒に帰る予定だった名前が告白されそうだった。私は告白現場を思いっきり見て、空気悪くして即座に一人で帰った。いきなり飛び込んじゃって悪いことしちゃった。今度からドアはノックして入ろう。それにしても一人の帰り道は暇だ。帰宅部だからよく一人で帰ることはあるもの、先ほどまで一緒に帰る予定だったから少し寂しい。及川がさっき美術室に居たってことはバレー部は多分、終わったんだろう。岩泉も今、帰りくらいかな。……ちょっと会いたいかも。いや、会いたい。そう思うと私の足は勝手に体育館のほうに向かっていった。
 
体育館はまだ明かりが点いていた。私、来ちゃってよかったかな。迷惑な気がする。うーん……帰ろうかな。そう思ったとき体育館から人が出てきた。長い男子と眠そうな男子。体育館の前で固まっている私をちらりと見てきた。岩泉じゃなくて良かったと思いつつ少し残念。すると長い男子が声をかけてきた。
「あの、及川さんに用あるんですか?及川さんなら帰りましたけど」
「は?何で及川?」
「え、違うんですか。及川さん目当ての女子が来るんで……」
「及川はどうでもいいよ。岩泉いるかなって」
「え、岩泉さんですか。国見、岩泉さんどこにいるか知ってるか」
長い男子は岩泉がどこにいるか知らないらしく、隣の眠そうな男子に声をかける。国見という名前らしい。
「岩泉さんだったらもうすぐ来ますよ」
「え、本当?」
私は嬉しさを隠せず少し上擦った声を出してしまう。
「さっき着替えてました。じゃあ俺達帰るんで。金田一、帰るぞ」
長い男子は金田一か。国見は金田一を引っ張って校門のほうへ向かう。
「さようなら!」
金田一は礼儀正しく、最後にこちらを見て挨拶した。そしてそのまま背中を向けて帰っていく。私はその背中に向かって「ありがとー」と声をかけた。それと同時に私の後ろからは声が聞こえた。
「おい、こんなとこで何やってんだ」
岩泉だ。
「あ、岩泉。えっと岩泉を探してたんだけど。色々あって名前と帰れなくなっちゃったから一緒に帰りたいなって。迷惑だったら一人で帰るから!大丈夫!」
断られたら嫌だななんて思って岩泉の顔色を窺う。岩泉は少し笑って「全然、迷惑じゃねえよ」と言ってくれた。嬉しいなあ。
「じゃあ帰ろうか」
「おう」

私達は並んで歩いた。何か幸せだ。少し緊張して言葉は少なかったけど一緒に歩くのは嬉しい。そんなこと思ってたら岩泉は急に立ち止まった。丁度、正門を出たときだ。そして周りを見渡す。
「ん?どうしたの」
「……手」
岩泉はぶっきらぼうに言うと、手を差し出してきた。ああ、手を繋ごうっていうことか。まさか岩泉から言ってくれるなんて。
「えへへ、ありがとー岩泉」
「おう」
私は出してくれた手を握った。本当、幸せ。頬が緩みっぱなしだ。岩泉は顔が真っ赤。ついそれを見て笑うと岩泉はもっと赤くなった。そして幸せそうに笑った。あ、この顔好き。
「じゃあ帰るか」
「うん」
そして私達はまた歩き出した。
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