08.5
岩泉に中学の時から片思いをして高校生になっていた。相変わらず私は岩泉が好きだ。だからこうして体育館の中を眺めている。岩泉が中三だったときは及川と一緒にチームを引っ張っていたというのに高一の今は先輩に教えてもらって引っ張ってもらってる。少し新鮮だ。もうそろそろ練習も終わる時間。今日こそ声をかけて、一緒に帰ってやる。帰れなくても話せればいい。私は高鳴る鼓動を抑え、深呼吸をして岩泉の帰りを待つ。

練習が終わり、着替え終わったところを狙う。さすがに体育館前で待つのは度胸が無い。だから少し離れた場所にいる。暫くして岩泉が一人で出てきた。今がチャンスだ。どくん、と心臓が音を立てる。大丈夫、大丈夫。私はさりげなく近付く。
「あ、いわいず……」
「岩ちゃーん!!ぼっち?ぼっち?」
あ、またこいつ……。体育館から出てきて後ろから飛びついたのは及川だった。今日も、及川が邪魔をしてきやがった。私が岩泉に声をかければお前がぼっちになるんだからな。
「岩ちゃんがぼっちなのは可愛そうだからこの及川さんが一緒に帰ってあげるよ。きゃー及川さん優しい!」
全然、優しくないから。最低。及川はいつもいつもこうやって声をかけようとすると岩泉に話しかける。それで私は話しかけられない。だから及川は嫌いなんだ。いつも気付かれないで終わる。けど今日はそれで終わらないんだから。岩泉の前をさりげなく通るから。私はそのまま無言で岩泉と及川の前を通る。話しかけて、なんてお願いしながら。すると岩泉は私に話しかけてくれる。
「あ、海神。帰り?じゃあな」
笑いながら手をふる岩泉。それだけで私は嬉しくて顔が赤くなる。
「っじゃあね!」
私も笑って手をふりかえす。いつも通り、と心の中で念じても声のトーンはあがる。岩泉から話しかけてくれたなんて嬉しい。さっきまで及川のやろう!みたいなものが心の中にはあったものの一瞬で岩泉が変える。本当、好きだ。
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