ヤキモチ


「国見ちゃん」
「苗字、その呼び方及川さん思いだすから止めて」
ちょっとふざけて呼んでみたら思った以上に嫌な顔をされた。及川先輩は悪い人では無いのに。国見君だって嫌いなわけじゃない。むしろ国見君は及川先輩を尊敬していると思う。
「及川先輩思いだすのそんな嫌なの?」
私が笑いながら問うと、国見君はすぐ頷く。うわー、先輩に容赦無いんだな。
「及川さん思いだすのは、嫌だよ。だってあの人うざいし」
「けど尊敬してるし良い先輩だと思ってるんでしょ」
「まあ、それは。一番、嫌な理由はちゃんとあるよ」
「え?」
嫌な理由って、なんだ。私は考え込む。
「うーん」
「そんな眉間に皺寄せないほうが良いよ。将来苗字の眉間に皺できるよ」
「ちょっ、そんなこと言わないでよ!」
国見君が私を笑いながら見る。
「皺にならないように伸ばしてやる」
「えっ」
国見君は私の顔に手を伸ばして、眉間を撫でる。指の感触が気持ちいいんだけど、恥ずかしすぎる。
「恥ずかしいから止めてよ。もう……」
私が赤くなりながら手をどかそうとすると国見君は笑って眉間から指を離す。
「で、苗字は嫌な理由わかったの?」
「国見君が変なことするから考えれませんでしたー」
「じゃあ、例えば俺が苗字の前で他の子の真似したらどう思う」
どう思うって、他の子の真似ねえ。
「国見君が他の子の真似って考えられない」
「何それ。じゃあ二人きりのときにいきなり他の女の子の話題を俺が出したらどうする?」
また私は考える。もしも国見君が、二人きりのときに他の子のことを話したら。
「……それは嫌だ」
国見君には私のことを見て、考えてほしい。図々しいかもしれないけど他の子のことなんて話されたら。そりゃあ、ヤキモチしちゃうよ。
「理由わかった?そういうことだよ」
国見君はそれだけ言うとそっぽを向いて口を閉じる。
あれ、国見君そういうことって……
「ねえ、国見君ヤキモチしてくれたの?」
それってすごく嬉しい。国見君はそっぽを向いたまま黙っている。少し頬が赤くなっているのが見えた。
たまにしか見せない国見君の愛が伝わってきたような、そんな気がした。
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