それは恋、なんて言わないけど


夢主の一人語りが大半なので注意

「先輩のこと見ると話しかけたくなります」
目の前にいる後輩はその高い身長が小さく見えるほど、もじもじしながら話す。
「それで話しかけたいのに、話すと何も考えられないです」
今、私の目の前にいる可愛い後輩。影山飛雄。綺麗な黒髪に整った顔。それで高身長。そんな見た目のくせして中身は子供っぽくて、バレーが大好きで、上手く笑えなくて。どこまでもまっすぐで可愛い後輩。私はそんな可愛い後輩、としか見ることができなかった。
「けど、話したいんです。それで先輩のことたくさん知りたいんです」
それなのに影山はそうではなかったみたいであった。綺麗な顔を赤くしながら話す。可愛い、という感想しか出てこなかった。まるで思考が途切れたようだった。
「先輩の一番になりたいって思うようになったんです」
ただ可愛い後輩が言う言葉に対して嫌悪感は全くわかなかった。むしろ嬉しく感じた。しかし私は彼を受け入れる理由も断る理由も無かったから何も話せないでいた。もしも彼の言葉を断るのだとしたら私は何と言えばいいのだろう。可愛い後輩だから悲しんでいる顔なんて見たくはない。できるだけへたくそで可愛い笑顔で笑ってほしい。しかし断るとしたらきっと、その願いは無理だろう。もしも受け入れるとするならば。私は彼がふざけた軽い気持ちでこのような感情を見せているわけではないとわかっている。真剣だ。だから私の適当な気持ちで受け入れても良いのだろうか。
「先輩が他の人と話していると嫌なんです」
私の目を見ないで影山は俯いて話す。目が合わなくて良かったとこれほどまで思うのは初めてだ。影山の目を見たら、その真剣な目を私はいつものように見れない。
「特に、男の人だと」
彼はすでに耳まで赤くしてそう話す。ああ、可愛い。嫉妬、そんな感情を彼だって持っているんだ。嫌だと思わせちゃってごめんなさい。嫉妬は汚い感情だと思っていたが彼のその感情はまっすぐした綺麗なものだった。
「先輩は俺と話したいって思いますか。話されて迷惑じゃないですか」
そんなわけないじゃない。可愛い後輩の言うことだから。
「嬉しいよ」
私は素っ気無い言葉しか返すことができなかった。嘘は無いけど、もっと良い言葉をかけてあげれば良かったなんて言ったそばから思う。
「影山、ありがとう。けどさ」
影山に私なんて合わないよ、もっと良い女の子がいるよ。そんな言葉をかけようかと思ったとき、それに合わせるかのように影山が話す。
「先輩と話している今も、何か熱くなって」
そして影山はまっすぐした目で私を見る。
「これ何ですか」
それは少し震えていて、泣きそうで。ああ、この気持ちを影山は知らないのだ。ここまでの言葉は告白なんかじゃない。ただの影山の思い。それを知って、安心したような残念のような気持ちを抱く私がいた。そして次は私が少し泣きそうになる。
「知らなくても良いんだよ、多分」
こんな気持ちになるって影山のことを私は好きなのだろうか。しかし彼に彼の思いの正体を明かすのはできない。きっと影山はいつか自分でわかるはず。そのときには私じゃない他の誰かを見ている。けどそのときになっても私が好きでいたら、そのときはどうなんだろう。
「いつかわかるから」
わかったとき、同じ気持ちだったまた伝えてほしい。そのときはきっと私も気持ちの整理がついているから。
「これからも、よろしくね」
そんな言葉でこの空気を断ち切った。
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