まるで正反対


好きな人のタイプは、と聞かれれば背が高くってかっこよくて優しい人。それで何でもできる人。なんて理想をつっこみまくっている完璧人間を私は言うだろう。だって女の子だから夢を見たい。そんな非現実的な夢を見て高校二年生になった今。初恋はまだ。ときめいたことすら無い。まあいつか王子様が現れるでしょう。そんなこと思っても現れる気配はゼロに等しい。
そんなことを考えていたのは一月程前。今、私は正反対な人に惚れている。かっこいいところは反対じゃないけど。それが同じクラスの西谷夕。きっかけなんて簡単だ。
「西谷君、今日、先生に呼ばれてるの忘れてない?」
私と西谷君は先生に呼ばれていた。怒られるとかじゃなくて何かを運んでらしいとか何とか。日直だからって先生、私達を働かせすぎだよ……。放課後に先生の所に行く予定だったのだが西谷君はそのまま部活に行ってしまった。だから私は体育館に行って練習をしている西谷君を呼びに行った。私に気付いた西谷君は大きく手を振ってくる。
「わりぃ!ちょっと待って!」
かけよってくれると思いきやちょっと待ってという言葉がきた。
「え、私、困るんだけど」
私が聞くとまたちょっと待ってときた。つい溜息がもれる。すると私の近くにバレー部の主将さんがやってきた。
「すみません。西谷が迷惑かけて。もうすぐ終わるので少し待っててもらえるか?」
かっこいい、背高い、優しい!けっこうタイプかもしれない。私はさっきまでの西谷君に対するいらだちを忘れ「はい」と即刻答えた。主将さんは笑ってまた練習に戻っていった。西谷君にあとであの人のこと聞こう。そう思いながら西谷君のほうを見る。そこにはいつもの仲間と笑っているような顔じゃなくて真剣な顔をした西谷君がいた。思わずかっこいいと思ってしまう。そして西谷君と反対側のコートから飛んでくる強烈なサーブを受け止め、あげる。バレーのことはわからないけれど今のがすごいのはわかった。あんな勢いのついたボールをあっという間に優しいものに変える。そして何より西谷君の反応速度が速かった。
「すごっ……」
思わず声に出してしまう。多分聞こえていないけれどすぐ口を閉じる。かっこよかった。とても。王子様とかじゃないけど、かっこよくってあのプレーを見た瞬間心臓が波を打った。西谷君はその後も綺麗にボールを返していく。その度に私の心臓は波を打つ。西谷君は皆のサーブを返し終えたのか私のほうにやってくる。私は何も言えなかった。
「俺のレシーブ見てたか?かっけーだろ」
自慢げに、自信を持っていう西谷君はまっすぐで眩しかった。すごい、羨ましい。
「すごかったよ。けど早く先生とこ行くよ?」
私は今、ものすごく動揺している。西谷君が隣にいるだけで鼓動が止まらないんだ。理想のタイプとかじゃないのに。
いつもクラスで馬鹿みたいに騒いで、背は小さいし。それなのに。全部、打ち消すかのようにかっこいい。
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