振り向いてみれば


夢主は2年生・花巻君と付き合ってる。それを知らない及川さん。

てくてくと効果音がつきそうな可愛らしい歩き方。一歩進むたびに左右へと揺れる綺麗な髪の毛。そして背筋が伸びて綺麗な姿勢。あの後ろ姿は間違いなく名前ちゃんだ。学年が違うからあまり会えないんだけど、廊下で見ることができた俺は今日、ついていると思う。俺は名前ちゃんにそっと近付く。名前ちゃんは俺に気付いている様子は無い。後ろから抱き締めたらどんな反応をしてくれるのだろう。やばい、にやける。俺はその背中に狙いを定めて飛びつく。
「ひゃっ!」
名前ちゃんは驚いたように肩をびくっと跳ねさせる。可愛すぎる。俺はそんな名前ちゃんに声をかけようとする。すると名前ちゃんから予想外の言葉が飛ぶ。
「花巻先輩ですか?学校では止めてっていったじゃないですか」
後ろから見える名前ちゃんの顔は少し不満気で、けど嬉しそうで頬がほんのり赤く染まっていた。すっごく可愛い。それより問題は、花巻先輩、という言葉だ。どういうことだ。
「えっと名前ちゃん、俺なんだけど」
申し訳ない気持ちとマッキーとどういう関係なのかととても気になる気持ちが交差する。名前ちゃんはマッキーじゃないことに気付くと恐る恐るこちらを振り向く。そして俺だと確認すると一瞬で嬉しそうな顔を青くさせる。
「え、っと、及川先輩?」
「そうでーす、及川さんでーす」
こういうとき、どう返せば良いんだろう。自分がものすごく動揺しているのがわかる。冷や汗でてる気がする。
「とりあえず……及川先輩、今までのこと全て忘れてください」
「えー可愛かったんだけど」
ちょっと茶化すように言う。まあ、言っていることは事実なのだが。しかし名前ちゃんは顔を青くさせたまま。
「じゃあ忘れなくて良いです。死んでください。あ、むしろ私が死にます」
「いやいや、俺、忘れるから!それよりマッキーと付き合ってるの?」
俺が聞くと名前ちゃんは顔を赤くさせる。可愛いんだけど素直に喜べないよ!
「えっと、は、はい。花巻先輩とは仲良くさせていただいております」
何かマッキーの親になった気分みたい。いやいやそれどころじゃない。名前ちゃんと付き合おうと思ってたのにマッキーに先を越されていたなんて。ショックすぎて言葉が出ない。
「花巻先輩はけっこう、抱きついたりしてきてだから間違えちゃったんです。すみません……別にそんな惚気てやろうなんて気持ち一ミリ足りとも思っておりません!」
ぺこぺこと頭を下げる名前ちゃん。また髪の毛が揺れる。そっか名前ちゃんってマッキーの彼女さんだったんだ。じゃあ俺が抱きついたりしたら駄目じゃないのかな?けど名前ちゃん好きだしな。
「名前ちゃん、俺、名前ちゃんのこと好き」
「え?」
「嘘じゃないよ。だからマッキーより俺のこと好きにしてみせるからね!」
だからこれからもいっぱい抱きついて、甘やかしてあげる。それは名前ちゃんには言わないけど。名前ちゃんは俺の突拍子もない告白を受けてあたふたしている。可愛い。
「じゃあねー名前ちゃん、告白の返事考えといてね」
俺はあたふたしている名前ちゃんを残して廊下を真っ直ぐ走りぬけていく。絶対、名前ちゃんのこと振り向かせてやるんだから。覚悟して待っててよ。あー……心臓の音、煩い!
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