「背の高い人呼んできてよ」
そうクラスのとある女子が言った。そして俺が呼ばれてしまった。そのとある女子とは俺は話したことが無かった。それなのに呼ばれてしまっ。背が高いというだけで。しかもその理由が社会の資料倉庫の片付けのようなものだ。そしてその倉庫に話したことのない女子と2人きり……。しかしあまり空気は重たくはならなかった。
「……あの、これどこに置けばいい?」
「あー、それは棚の上」
俺は呼ばれた身であって何をすれば良いかわからず、その女子の指示に従いながら動く。その女子がどんな子か知らなかったのだが人見知りせずにちゃんと話してくれるのが救いであった。それによく笑ってくれるし俺が何かしらしたら声をかけてくれるし優しい。そのお陰で作業はスムーズだったし俺はその子と話すのが楽しいななんて思っていた。
「置いたけど、次何すれば良い?」
「ありがとう。えーと……資料の整理やろう。棚いくつかあるから私がこっちやるから金田一君がむこうやってくれる?あ、最初にやり方教えるね」
その女子はそう言うと隅のほうの椅子を持ってきて、棚の前に置いた。そして上履きを脱いでからその椅子の上に乗ると棚の一番上に手を伸ばす。正直、その子はあまり身長が高くない。むしろ低いほうだ。棚の上のほうは椅子に乗っても少しだけ背伸びをしないと届かない。危なっかしい、なんて思っているとその子による資料整理の仕方の講義が始まる。
「後ろにラベル貼られてるでしょ?それを見て正しいところに戻すの。あと巻数とかあれば揃えて並べる。けっこう簡単だよ」
そう言いながらてきぱきと本の整理をする。俺にできるかなと思っているとその子がこちらを振り返ろうとする。そのとき乗っていた椅子から足を踏み外す。
「え」
「やっ……」
落ちるときは一瞬であった。
彼女の背中が近付いてきた。避けよう、とは思わず彼女を支えなければという思いがあった。しかし支えるのには時間が足りない。
そんなことで俺の胸には彼女の頭があって、両腕で彼女の身体を抱きかかえていた。軽い、そして柔らかい。腕に柔らかいものが当たってる。恐る恐る、腕を見ると案の定、当たっていた。
「わ、わりぃ」
顔が赤くなってすぐその子を腕からおろす。その子も赤くなっている。
「あ、ありがとう。別に、全然、気にしてないから!」
いや、気にしてるだろなんてことは言えなくて「ごめん」と目を合わせずにいることしかできない。
「あ、あ、金田一君はあっちの棚、やってくれる?」
気を使ってくれたのかいたたまれない雰囲気を感じているのかその子は棚の逆のほうを指さす。
「わかった、やる」
「うん、お願い」
相変わらず目を合わせられないまま俺は逆のほうに向かう。そのとき腕に当たった感触をふと思い出す。柔らかかったな、とまるで他人事のように思った。思い返して、柔らかいとか思うってただの変態じゃねえかよと思い、頭を横にふる。
そしてふと彼女のほうを見る。
赤くなって、口元はもぞもぞさせて資料整理をしている。可愛いと急に思った。決して腕に柔らかいものが当たったからではない、と思う。
すると彼女もこちらを見た。視線を感じたのか、何となくか。どちらにしろ目が合ってしまった。
顔の熱があがる。と思うとその子の頬が先程より赤く染まる。
俺達はどちらからともなく目を逸らした。やっぱりあんなことがあった後すぐに喋るのは気が引ける。俺はそこまで度胸は無いし、彼女と親しいわけではないのだ。だから俺は彼女と目を逸らして資料整理に勤しむ。
しかし頬の熱と鼓動の高まりはいつになっても一定だった。

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