テスト前、その日は縁下の特別授業という名の地獄の勉強会が無い日であった。だから彼女との勉強会をしてみた。初めて、自分の部屋にあげたのだ。勉強が早く終わればこの室内で……なんて考えたりもしていた。そのせいか今日はいつもより早く問題集が終わる。多分、他の人からしたら普通だろうけど俺にとってはとても速いのだ。俺は前に座っている彼女を見る。俺の彼女は可愛い。潔子さんは綺麗だけど、彼女は可愛い系だ。ハゲのくせに可愛い彼女とか、とよく馬鹿にされるがそれでも彼女が俺を選んでくれたのだから俺は「嫉妬するでない」とドヤ顔をして馬鹿にしてくるやつの肩を優しく叩くのだ。
そして今、目の前の彼女は俺がやっと終わった問題集を未だ解いていた。それもけっこう前半の問題。そこで思いついた言葉を言ってみる。
「もしかして頭よくないのか?」
俺がそう言うと、俺のほうを向いて「よくない、じゃない。悪いんだよ」と真顔で言ってきた。
目の前の彼女は真面目な顔で問題集を解いている。しかし全く、進む気配が無い。
「田中ー、終わんない」
そして十分後、半べそで彼女はそう言ってきた。
「教えて」
少し天然とか思ってたけど彼女は本当に頭がよくなかったらしい。真面目に解いてるが殆どが間違い。俺は人に教えるほどの頭はもちろん無いのだが彼女が他の人から教わるというのもなんだかスッキリしない。だから俺は必死に教えた。縁下から教わったことを丁寧に自分の言葉で言う。
そしてついに彼女は俺に教えられた通り、問題を解けたのだ。
「できた!」
嬉しそうにして目を輝かせながら言う彼女は言うまでもなくかわいい。俺は彼女を「すごい」なんて誉めながら内心が熱くてしょうがなかった。
「私、馬鹿すぎて皆から教えてもらえなかったんだよね……田中に教えてもらえて嬉しかった!」
にこり、と笑い俺を喜ばせる言葉を放つ彼女。
そしてまた一言。
「わかりやすかった!また勉強会したいな」
勉強会したいって、家にまた来てもらえるってことか……?彼女にその意志は無いにしても嬉しいのは変わらない。そしてわかりやすかったなんて無邪気に笑いかけられてしまったら嬉しくないわけがないだろう。
縁下に教えてもらって良かった。彼女にいいところ見せられたし。たまには勉強も悪くない。
彼女はまた問題に苦戦していた。俺の出番だなんて少し笑った。

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テーマ「人外ファンタジー」
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