ばか、ばか!
帰り道、今日は隣に金田一はいない。そのかわりに苗字がいる。最近、いきなり告白されて断るのも面倒だし苗字はいいやつだからとりあえず付き合ってもいいという答えを返した。それからはなぜか苗字が可愛く見えたりしてきた。元々可愛らしい顔立ちだったけど恋人という関係になって可愛く見えてきた。そして自然とずっと一緒にいたいと思った。守ってやりたいなんて男に対して思ったりもしていた。そんな矢先だった。
「国見って身長高いけどなんか守ってやりたくなるわー」
そう俺より身長の低い苗字が言い出した。別に俺、お前に守ってもらわなくても自分の身くらい自分で守れるんだけど。まあ面倒だからやってもらえれば楽といえば楽だ。とりあえず苗字の言葉を否定せず苗字の意見を聞いてみる。
「なんで?」
「だって国見って可愛いじゃん……!」
聞くと苗字は顔を明るくさせる。そんな笑顔のほうが可愛いだろうと思った。いつも無愛想というか無表情な俺なんかより。
「苗字のほうが可愛いんじゃない、身長的に」
笑顔が可愛い、なんて言えばきっと苗字は調子に乗るだろうから少し馬鹿にしたように言うと「はぁ!?俺、別に小さくねえから」と怒る。小さい、といっても170くらいはありそうだけど俺とは10cmほど差がある。
「そうだね、小さくない、小さくない」
頭を撫でながら馬鹿にするような感じでそう言ってやる。また言い返してくるかなと思ったら苗字は黙ってしまった。しかも俯いてしまった。おや、と思って少し背中を丸めて彼の顔を覗きこむ。と、赤い色が見えた。
「……どうしたの」
「ばか、見んな、ばか」

両手で赤くなった顔を隠すのが可愛くって不覚にもときめく。
「手、どけてよ」
お願いのような形で苗字にはそう言うが実際は実力行使で無理矢理、彼の手を掴んで顔から離す。
「ばか……」
手を顔から話されると眉間に皺を寄せながら俺を睨む。睨んでも正直、上目遣いのようにしか見えなくて顔も赤いせいで余計に可愛さが目立つ。
「苗字、その顔、すごい可愛い」
思ったことをそのまま口にするともっと可愛くなる。
「国見ってさ、いつもすごい眠そうでどっか抜けてて危なっかしくて可愛くて守ってやりたいけど、なんでこういうときだけかっこいいんだよ!ばか!」
苗字は早口でまくし立てる。最後のばかはいらないなと思いつつも初めてこいつからかっこいいって言われたなと思い、嬉しかった。
「っていうかさ、お前、手離せよ……」
苗字は俺にずっと掴まれていた手をふる。
「あ、忘れてた」
このまま普通に離すのもつまらないなと思って、離す前に手首にキスを落としてみた。
「おまっ、ここ、外!」
「別にさっきからしてる会話もこれも変わらないだろ」
そもそも人だって全然、いないし。それにも関わらず大騒ぎする苗字は色んな人にこういうのを見せたいのだろうか。ばかなのかな、と思ってそれなのになんだか可愛いって思った。あ、けっこう、俺もばかかもしれない。
苗字の手を離すと苗字は先程、キスをした手首をじっと眺める。
「……なんかうずうずする」
そう呟いて苗字は俯いた。
「国見って意外に肉食なのな……いつもお前って可愛いのに、くっそ、ギャップかよ」
「苗字っていっつもうるさいのに意外にすぐ赤くなんだね」
「うるせえ!」
「ギャップかよ、可愛い」
「ばか!」
「俺が苗字のこと守ったほうがいいんじゃないの?」
「……めっちゃ国見かっこいいから別にそれでもいい」
照れたように唇を突き出して言う苗字は可愛かった。
「苗字、可愛い」
俺がまたそう言うと「ばか、うるせえ」と暴言が飛んでくる。そのくせに顔は赤い。すぐ感情が表に出て、単純なやつだ。そのくせに可愛い。
「苗字も充分ばかだからな」
そう言って笑ってみせた。ばかだから"も"の意味に気付くかわからないけど。


……ぐだぐだになってごめんなさい。意外に男主好きな方が多かったので書きました。

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