4話「 過去の友情 」
それは、一年前の話。
『わあ、うまいね!』
田村美紀子…みっちゃんは私の机を指さし、無邪気に笑った。
『ありがとう』
少し照れて落描きを隠す。
『私、男の子描くと何か中性的になっちゃうからなあ…うらやましい』
『そうかな』
みっちゃんは、「あ、」と何かを思い付いたように私の絵を指さしたまま固まった。
『この人、どこかで見たことあると思ったら「MAGI☆GIRL」の亮君だったりする?』
『そう!知ってるの?』
『うん、大ファンだよ!』
みっちゃんは少し自慢気に言ってみせた。
私にとっては思い入れの深い漫画だけど、案外身近で知っている人がいなかったから、すごく嬉しかった。
そうしていつの間にか、私達はお互いを「親友」と呼べるくらいの仲になっていた。
二人で映画を見たり、お泊まりしたり、学校では毎日好きな漫画やアニメの絵を描いた。
登下校だって一緒だった。
『ねえ、みっちゃん』
『うん?』
私達は屋上のフェンスに寄りかかり、
いつもその定位置で、
恋の話や仕事の話、学校の話で盛り上がっていた。
『私ね、彼氏ができたの』
ずっとお互い「彼氏ほしいねぇ」と、話していたから、みっちゃんは自分のことのように喜んでくれた。
私の手を握って痛いくらいブンブン降って喜んでくれた。
『すっごい!さすが、あゆみぃ〜!』
『ちょっと、いたいよ』
『ねぇ、誰!?何て名前なの!?ねぇねぇ!』
『…ないしょ〜』
そう、当時の彼氏…
そいつが村谷和哉だった。
『え〜、ケチィ…。コクったの?コクられたの?』
『…コクられた』
「好きです、付き合ってください」
そう書かれたノートの切れ端が下駄箱に入れられていた。
目立ってもないし地味でもないけど、イケメンだと評判は良かったから、正直自分でも驚いた。
『あゆみぃ〜!ホントおめでとう!先越されちゃったけど、私すっごい嬉しい!』
本当、上手すぎるほどの演技だったよ。
みっちゃん。
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