3話「 裏切りとの再開 」
私は買い物袋を片手に握りながら、蝉が鳴きわめく並木道を他所に、家路を辿る。
空はすっかり橙色に染まっていた。
家の通りの十字路に差し掛かったとき、人影にぶつかった。
「あっ、ごめんなさい!大丈夫ですか!?私、急いでて…」
反動で倒れ込む私に、人影は戸惑ったように声をかける。
そして私の顔を一目すると、彼女は、田村美紀子は一瞬青ざめた。
「…あ、あゆみ!」
慌てて買い物袋から飛び出た物を拾いながら、遠慮がちに言う。
「あなた、こんな物ばっかり…」
散らばった物は、無数のカップラーメン。
「おい、美紀子。何があったんだよ」
向こうから小走りで表れたのは田村美紀子の彼氏だろう。
おそらく彼は…
「…お、おまえ…」
村谷和哉。
私の元彼。
ついでに田村美紀子は私の親友だった人。
「和哉、知ってるの…?」
私は彼の顔を見れなかった。
私自身が見ることを拒否していた。
「………いや」
田村美紀子はほっとしたように、彼から目を離すと私に謝罪した。
「ご、ごめんね。大丈夫?ケガして…」
「…めて」
「…え?」
「やめて!!!!!」
散らばったカップラーメンを拾い立ち上がる。
村谷和哉は私から目を逸らす。
そして家路を走った。
無我夢中に走った。
息が切れて肩で呼吸しながら、走り続けた。
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