天仰ぐ少女と北極星
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この部屋で朝を迎えるのは今日で2度目だ。
ただ違うのは、昨日のような変な夢を見ることはなく、気持ちの良い朝を迎えることができたということである。
ここはギルドで働く者に与えられる部屋。
当然、ここで働くことになった私にも同じく与えられていた。正式に入隊した今日からは、ずっとここで過ごすことになる。
「さて、早速任務を――」
そう言いながら伸びをした時。ぐぅ、と唸る自分の腹。
1人部屋なので誰にも聞かれていないはずだが、その間の抜けた音に思わず顔が赤くなる。
「え……えっと、まずは食事かしらね」
空腹を訴える自分の身体に負け、メーアはさっさと自分の服に着替えてから部屋を後にした。
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ギルドの食堂は、エントランスがある棟とは別の棟にあるらしい。
北極星のギルドは非常に広い造りになっており、エントランスのある中央棟、その左右に西棟、東棟、裏に修錬棟と4つの棟がある。
その内の東棟に食堂が設置されているのだ。
「……で、東棟ってどうやって行くんだったっけ……」
各棟への道は、侵入者対策も兼ねてわざと入り組んだ道になっているのだ。昨夜寝る前にあれほど確認したはずなのに、困ったことに全然思い出すことができない。
ああ、何故さっきギルドの見取り図を持って来なかったのだろう。
数分唸ってはみたがやはり思い出せそうにない。
……仕方ない。一度自分の部屋に戻るか。
小さくため息を吐き、今来た道を引き返すべく後ろを振り返る、と。
「どうかしたのー?」
目の前にはふわっとした白に近い髪の、猫っ毛の女性。
身に纏う服も含め、全体的にふわっとした印象を持たせる人だ。
名前は確か――。
「……シファさん?」
「あらぁ、覚えててくれたのー?嬉しいなー」
ふふ、と目を細めて微笑みながらのんびりした口調で話す女性。
この話し方が特徴的で印象が強かった、というのが本当のところだが。
「もちろん。えっと……実は私、東棟への行き方を忘れてしまって」
苦笑しながらシファに事実を説明する。
我ながら初日からとんだ失態だ。
「あらそうなのー。ここは広いから最初は迷って仕方ないのよー。それより丁度良いわぁ、良かったら私と一緒に食堂行かないー?」
思ってもいなかった彼女からの誘いに一瞬驚いてメーアは目を瞬く。
断る理由なんて無い。快くその誘いを受けた。
「本当ですか? ぜひ、ご一緒させてください」
こうして2人は一緒に食堂へ行くことになった。
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