天仰ぐ少女と北極星
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「今日からここで暮らすことになりました、メーアです。よろしくお願いします」


先程とは打って変わって静かになったエントランス。そこに少し緊張して上擦ったメーアの声が響きわたった。

改めて見ると、点々と並べられた幾つもの丸テーブルには入りきらなかった者が溢れている。これだけ多くの者がここで働いており、暮らしているのだ。
自分も今日からここで過ごすのだと思うと、わくわく感と同時に不安にもなった。

「ありがとう、メーア」

ぽん、と肩に手が置かれる。
それと同時、ふわっとラピスから漂ういい匂い。

「じゃあ、最初は私から失礼しようかしら」

ラピスはそのまま一歩、前に進み出て。

「ギルドマスターがお留守の時にここのまとめ役を任されているラピスよ。二級戦闘士の称号を持っているわ。……私の話を聞く時は、静かにお願いね?」

しっとりと、口に手を当て微笑むラピス。
見た感じすごく優しそうなお姉さんなのだが、最後の部分をやけに強調して言った辺りまだ内心怒っているのかもしれない。
彼女には要注意だな、とメーアは小さく頷いた。


「はい、次は?」

「……じゃあ僕が」

少し離れたテーブルからすっと手が挙がる。
名乗りを上げたのはオレンジ色のファー付きコートを身に纏った、どこか幼い顔立ちの青年。彼は白と茶の混ざった珍しい髪をしていた。

彼が名乗りを上げるとその周りからは囃し立てるような声が飛び交い、青年がはにかみながらそれを制する。その後こほんと軽く咳払いをしてから、

「えっと、僕はハイン。ラピスと同じく二級戦闘士なんだ。わからない事とかあったら気軽に聞いてね」

言うとハインは一度こちらに向かってにこっと微笑を浮かべ、再び席につく。
その後も仲間にちょっかいを出され楽しそうに笑っている青年は、人に好かれる良い人なのだろうなと思った。


「じゃあ次は――」

ラピスの声に、ハインに続いて次々と自己紹介をしていくメンバーたち。そのひとつひとつがみんな個性的で。

気付けば、時間は驚くほど早く進んでいた。



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