天仰ぐ少女と北極星
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「――という訳で」


場所はギルド『北極星』中央エントランス。
そこに集まり談話している者たちの注目を集めるように、ぱんぱん、と両手を打つのは鮮やかな桃色の髪をもつ見目麗しい女性。彼女は妖艶なボディラインが浮き彫りになる露出度の高い絹のドレスを身に纏っていた。

これから対面式らしきものがあるとのことで、留守にしているギルドマスターの代わりにこの女性、ラピスが私をギルドメンバーに紹介してくれるようである。


「はいはいみんな。ちょっとこちらを向いてね」

優雅に扇子で自身を扇ぎながら、穏やかな口調でラピスが言う。しかしそれぞれ仲間との会話に華を咲かせているギルドメンバーたちにはその声は届かず。辺りが静かになる様子は見られなかった。

それを見て機嫌を損ねるかと思いきや。彼女は変わらず笑顔を浮かべ、むしろそれを楽しむかのようで。
――と、その刹那。ひゅんと空を切る音が聞こえた気がしたのと同時、不自然なくらいにしん、と静まり返るエントランス。
メーアが状況を呑み込めずに目をしばたいていると。


「あらやだ……またマスターに怒られちゃう」

しっとりと苦笑しながら口に当てたラピスの手には、先程まで持っていた扇子は無く。
少し視線を動かすと、見つけた。先が尖っている訳でもない普通の扇子が、とある男子たちの間を割くように壁に突き刺さっている。どのような力で投擲すれば扇子が壁に突き刺さるのだろう、とメーアはラピスに気付かれぬよう身震いした。

そんなことはつゆ知らず。当の本人はあくまで笑顔で。


「さぁて、そろそろ新入りさんとのご挨拶といきましょうか?」



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