/創作
 僕は笑っていた。あははは、と嗤っていた。夢の中での出来事である、自分の目の前に腕が転がってきたのだ。それはとても愛しい人の腕のような気がした。
その腕が取れたのを見て、そして彼女の痛みと恐怖でぐちゃぐちゃになっている顔が愛おしくて、けらけら笑っていた。

―― そんな夢を、ここ1年ずうっと見続けて居るのだ。可笑しな話だろう?



 02 その血の温もりを、僕は知っている気がした



「ははっ、そりゃ面白い話だねぇ。」

「面白いってなんだよ、僕わりと真面目に悩んでるんだけど?」

「…まあ1年も見続ければ…そりゃあ悩むよなあ。」

 久遠、もしかしてストレスでも溜めてるんじゃないのか?と僕の顔を覗き込んできたのは友人である薙だ。ストレスか、と暫く考えてみたけれど特にストレスになるような事も無かったし、というかストレスになるとしたらこの夢を視続けている事だろう。
 薙は暫く考えるような仕草をしてふむ、と言葉を発すると突然立ち上がった。この薙という人物は、よく分からない人物だった。どう知り合ったのかもよく覚えていない。いつの間にかこいつは、僕が何でも話せる人物という位置に居た。…出会いを覚えていないなんて、僕の記憶力も大分落ちたな。


 …1年間僕はずっと同じ夢を視続けている。誰の物ともしれない血に塗れた腕を見てけらけら笑っている夢を一年ぶっ通しだなんて。…まあしかし1ヶ月続いた時は精神的にきていたのだが、1年も経ってしまうとなんだかもう慣れてしまって取りあえず変な夢だなあ程度になっていた。
 しかし普通に考えてそんな夢を1年、っていうのは可笑しい話だからこうやって薙に相談している。本当は精神科にでも通った方が良いんだろうが別に病んでる訳ではないから… うん、病んでいない筈だ。

「なあ知ってるか久遠、夢ってのは不思議なものなんだよ。」

「いきなり何だよ…」

「まあ良いから聞けって。」

 何か解決策あるかもよ? と悪戯っぽく笑った薙を見て僕は溜息を吐いた。こいつは一度語りはじめると中々止まらない奴だ。何度かよく分からない話に付き合わされているからよく分かる。

「夢っていうのはさあ、いくつかに分類されるんだよ。」


 まずよく言われるのが己の心理状況が夢に表れるっていう話。例えば誰かに殺される夢だったりしたら縁起は悪いが、自分の殻を破って新しい自分に生まれ変わりたいっていう自分の想いを表しているだなんてよく言う。
あと脳が記憶の整理をしている時、その整理されている記憶が夢となって出てくるだなんて話もある。

 でもね、俺が一番信じてる説はこれ。前世の記憶が夢に出てくるなんて話、聞いた事ない?…え?一番信憑性薄いって? 夢ないなあ… でも、たまにいるらしいよ。夢で前世の自分を視てしまう人。オカルト雑誌とか見るとわりとそんな話が載ってる。まあ正直かなり盛ってる話だなとは思ったけど…視たっちゃ視たんじゃないかなあって俺は思うよ。

 …え?根拠? …根拠ねえ………




「俺も視た事あるから、って言ったら信じてくれる?」

「へえ…お前の前世はなんだったんだ?」

「え? んー……」


 天皇だったよ! ……なんちって。
 そう言って薙は舌を出した。最後のさえなければわりと信憑性上がっていたんだがなぁ…と思って僕は今日2度目の溜息を吐いた。
やっぱりこいつは掴めない奴だ。真面目な話かと思ったら突然ふざけ出したり、妙な話の逸らし方をする。
 





「嗚呼、あとこんな話もあるんだけど、知ってる?」



 夢は繋がるものらしいよ。

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