真っ暗な部屋に、不自然なまでに盛り上がった掛け布団。

そして微かに聞こえるのは、溺愛する弟の悲しげな泣き声。


ゆ、幸村が、泣いてる…


「どうしたの?幸村、もう朝だよ〜遅刻しちゃうよ?」


やさーしく問いながら近づき、こんもりした布団の天辺を撫で撫でしてみる。しかし次に返ってきた幸村の言葉にオレは凍りついた。
ていうか、驚きのあまり漏れそうになった。
むしろ漏れた。


「えっ、えッ、…幸村?
今、なんて…あれー?空耳かなぁ?」


オレはもう訳がわからず汗だくで、漏れだくで。
はははーなんて情けない笑いがこぼれでる。
そして真っ白になった果てに、絶望。


『さすけなんかきらい』


オレはショックのあまり数秒意識を飛ばした。
……しばらくして、
ぱっちん、帰還。


「幸村ぁぁ!!!嘘でしょ!?ねぇ、嘘だと言ってちょーだいよぉ!!!!きらいって、嫌いなんて、そんなの…やだぁーーー!!!!!」


真意を問うためにも満身の力を込めて幸村とオレを遮断する布団をひっぺ返す。

が、幸村も頑張る。

なかなか剥ぐことができず、しばらくふたりで掛け布団を取り合う命がけの、だが、絵的にはワリと地味めな戦いを繰り広げた。

まぁ、結果はオレが十分に年の差5年分の力量を見せ付けて勝利したわけだが。
うつ伏せで蹲る幸村はすすり泣き続けてオレを見ようとしない。

なんだかその姿が可哀想すぎて、こっちまで胸が痛んで幸村のほわっほわの髪を撫でると、
「さわるな!!」
すっげー勢いで手をはたかれた。

こうなったらオレはいよいよ、石像になる。


そこへ実子を心配して入ってきた母さんはともかく、何故かいてはならぬ、いや、生きていてはならぬ野郎までもが、この神聖かつ、実に清らかな空気に満ちた部屋に侵入してきたことにオレは目を見開いた。


「おい、幸村まだ寝てんのかよ。てめぇの好きな学校に遅れるぜ」


オレの反応が遅れてるのをいいことに奴は、ずかずかとそのうす汚い身体をベッドで蹲る純白幸村に近づけてくる。

オレはその危機的状況にステータス異常、石化を○の針を使わず自力で回復させ、政宗の胸ぐらをねじねじに捩じ上げた。


「おい、オレの幸村に何しやがった!!」

 


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