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「あぁ、そう。そういうこと。オレ様のことを政宗がそんなふうに言ったの」
だから嫌だったんだ。こいつが幸村に関わるの。
確かに大本を辿ればオレが悪いんでしょーよ。オレが今までしてきた下半身にまつわる行いがね。
誰にも話しちゃいないのに、オレがいろんなおねーさんとしまくってるって奴は知ってて、まぁちょっと人目につかない細い路地でヤってんの見られたってのもあんだけど、それを弱みとして前からいろいろ言ってきて、だけどオレは別にそれが弱みだなんて思ってなかったし、誰にバレても構わなかった。
だが今は違う。立派な弱みなんだよそれは。
何も知らない無垢な弟が、兄であるオレがそんなことしてるって知ったら、きっと悲しむだろうし軽蔑するに違いない。
うん、違わなかった。
だって今の状況がそれだもん。最凶だよ。
触るなとか、完全に不潔扱いだし。
とりあえず相変わらず転がってる元凶、Mを部屋から蹴り出す。
そして会話の内容にやや驚き気味の母さんにも丁重に退室願い、幸村と二人になった。
オレとふたりっきりになるのが嫌なのか母さんが出て行くのを見ながら、幸村はあぁ、なんて情けない声を上げる。
まさかの完全に嫌われモード突入じゃないだろうか。もう生きた心地がしない。
「幸村、起きてここに座って。お話しよう」
その誘いにもずびずび鼻を啜っていやいやをする。
いや、カワイイよ?
すっげーかわいいよ。
できたら夜のお布団の上で、その顔してくれたらオレもう一瞬でイ、
あ、違った。真面目にお話しするんだった。
何度か優しく起きるように諭したけど、なかなか言うことをきかないので、ちょっとお兄ちゃんモードに切り替えてみる。たぶんオレは焦ってる。
「聞こえないの?
幸村、早く起きなさい」
今まで厳しい口調で接したことがないので、驚いたのか。
幸村はびくっと肩を揺らし、真面目も大真面目なオレの表情を確認するとゆるっと起き上がって、ベッドの上で正座した。
オレの脳内はやっと幸村の顔がちゃんと見られて大はしゃぎである。
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