「さあっっっっむ!!!!」


12月上旬。私はコートを着て、そう叫んだ。すると隣で梨花が白けた目でこちらを見てくる。


「…あんたそんなこと言うならタイツぐらいはきなさいよ」

「え、やだよ。オシャレじゃないもん」

「……」


だってタイツのまとわりついてくる感じも嫌いだし、何よりオシャレじゃないし。私は年がら年中、ミニスカートに黒のハイソックスだ。

梨花は言った通り黒いタイツをはいている。梨花は顔がいいから服をそんなに気にしなくてもいいんだから、いいじゃん。


ずびずび鼻をすすりながら帰り道を歩く。しっかし12月ってこんなに寒かったっけ。

今日はマフラーも忘れたし最悪だ。隣の梨花は暖かそうな赤いマフラーを巻いている。うう、羨ましい…。


「梨花の家で暖とって帰る…」

「そんな遠くないでしょ」

「寒い…耐えられない…」

「今でそんなんじゃ今後凍死するからね」


大丈夫、ヒートテック着まくるから。





「ただいま〜〜」

「おかえり〜〜って瞳ちゃん相変わらず寒そうねー!!」


梨花の家に帰ると、梨花ママは驚いたように私の足を見る。


「でも瞳ちゃん足細くて羨ましいわ」

「お風呂でのマッサージを欠かしてないんで!」

「美意識高いわねぇ」


だって足を見せるからには綺麗にしとかないと。まあ、隼人くんにしか見せないけどね。なんて思いながら、私はさっさと二階に上がってとある部屋を目指した。


その部屋のドアをどんどん!と叩く。最近ノックというのを覚えた。この前隼人くんに「ノックぐらいしろ!」と怒られたからだ。

ーーしかし、なんの返事も返ってこない。


「はーやとくん!」


ドアを少し開いて部屋の中を覗く。と、


「スー…」


ベッドの上で携帯を握りながら寝ている隼人くん。


「(ひゃああああ隼人くんの寝顔!!)」


私はすかさず携帯の無音カメラを取り出して、隼人くんの寝顔を連写する。やばい、可愛すぎる。隼人くんの寝顔は幼くて本当に可愛い。


ベッドに肘ついて、じいっと彼の寝顔を見つめる。鼻高い、肌綺麗。あの梨花の兄でもあって、顔は綺麗だ。性格が残念だったりするけど。


「隼人くん、好き」


どれだけ言えば伝わるかな。もう伝わっているはずだけど。

いつ隼人くんの恋人になれるかな。もっと大人にならなきゃいけない?もっと待たなきゃいけない?


「もう待てないよ」


早く彼女として隼人くんの隣で歩きたいよ。恋人つなぎしたいよ。

ーーーなんて言っても彼は寝たままだ。


くそう、私は頬を膨らませながら彼の前髪を整えた。





ーーーーーーーーーーー……


「ーーーんあ?」


携帯を弄っていたはずが寝ていたらしい。布団もかけずに寝てた…けどなんだかあったかい。

なんて視線を下にずらせば、


「スー……」


俺の胸元で、瞳がくっついて寝ていた。


「……」


ど・う・い・う・状・況!?!?

頭が真っ白になる、が瞳はちゃんと制服を着ているから何も起こっていないはずだ。セーーフ!!

と、俺が一息つくのも束の間、さらに視線を下に動かせば、瞳の短いスカートが無惨に捲れていた。


「……」


お、お、お、おちつけ、俺。

ちょっと手が伸びそうになった。悪い意味で手が伸びそうになった。


「瞳!!起きろ!!」


ゆさゆさと寝ている彼女の体を揺らすけれど、


「うる、さぁい」


彼女はさらに俺の腰元に手を伸ばして、抱きしめてくる。

アアアアア!!ダメ!!ヤバい!!俺も男なんですけど!!

必死に理性を働かせて、布団を握りながら埋まる。そして勢いよく瞳を剥がして、掛け布団を彼女に掛けた。


「たく、なんでこんな寒いのにあんな短いスカート…」


俺は寒いのに何故か掻いた汗を拭いながら、瞳を見下ろす。

しっかし、肌はスベスベだわいい匂いするわ、こいつも少しぐらい女だって自覚しろよ…。なんてため息をついて彼女の寝顔を覗き込んだ。


…やっぱり寝顔は幼い。俺は彼女の乱れた髪の毛を丁寧に整える。その髪の毛はサラサラで、さらにいい匂いが漂ってきた。


瞳、



「俺はいつ、お前と付き合えるかな」


俺にもわかんねーや。










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