【パンツの彼】

私が中学3年生の時、A先生という大学卒業したての技術の男の先生がいました。彼は若いせいか、中古と思われるいかついバイクで学校に来ていました。そんな彼はトップスが常に短いせいか、しゃがむと必ずパンツが覗いていたのです。

私と友達はいつもそれを笑っていました。「今日は緑パンツやで」「黒いゴムに赤いのや」ーーこのように。

ある日私が廊下を歩いていた時、前からA先生が歩いて来るのが見えました。思わず笑ってしまう私。するとA先生は私の前に立ちはだかったのです。


「何でいっつも俺のこと笑ってんの?」
「え?」
「俺の歩き方がおかしいん?喋り方?顔?なんなん。何がおかしいんか言って」
「あ、いや別に…」


あの時の私は『あなたの腰から覗いているパンツです』、なんて言える勇気は無かった。



【ぶっとび教師もの】

一般生徒は入ったことないであろう、部屋のドアを開く。そこには高そうな椅子に座って資料をめくっているスーツ姿の男性がいた。「…来たか」私を見るなり楽しそうに口角を上げてみせた彼。私はそんな彼に引き込まれるようにそちらへ向かう。そして彼も自然な手つきで私のネクタイを持ち、引き寄せた。

学校で彼のことを知らない人なんていない。「何の資料ですか?」「この学校の進学実績についてだよ」彼は資料を手放して、引き寄せた私を上目遣いで見つめた。所詮、浅はかな関係。私はこの学校の千何人の生徒の中の一人でしかない。

ーーーーーーーーー【校長室】

私はこの教室が嫌いだ。



【私の母校】

他に類を見ない変わった制服を着て、私は登校する。駅から20分、永遠と続く閑静な住宅街を歩くのだ。そして学校の門をくぐれば春は桜、秋はイチョウが綺麗な坂が現れる。しかし、今の時期は銀杏が臭い。

約数十年変わらないボロボロの靴箱にローファーを入れて、トイレで履くようなスリッパを履く。そして、建設されてから耐震工事はされてなく、震度4で崩れると噂の校舎の廊下を歩くのだ。階段を上がれば、ドアの前に立っている学ラン姿の男の子。

「おはよー、早いなあ」「俺はいつもこんなんやで」「すごいな」

彼は教室の鍵である南京錠を開けていた。彼がドアを開けて、私も続いて教室に入る。教室の床は板張りで、割れている所が多い。そして換気扇があったのであろう、壁には大きな穴が空いている。

ふと窓から中庭を見る。そこには汚い池と、有名な哲学者の銅像。それも酸性雨のせいで汚ならしい。

こんな、制服はダサくて校舎はボロボロ。どうしようもない無い学校だけれど、私はこの学校がどうしようもなく好きだ


【無邪気な感性を持つ長女と緩く死を待つ男のエゴから愛が生まれる話】

「あー、早く死にたいなあ」

あなたは直ぐにそう言う。嫌よ、そんなの。あなたがいなかったら私はこの世に生きる意味はない。そう、あなたは私の手で死んで私はあなたの愛で死にたい。純粋にそう思うの。

「嫌だよ、生きてよ。そして私に殺させてよ」



「嫌だよ、生きてよ。そして私に殺させて」

お前はいつもそう言う。俺はただゆっくりと死を待ちたい。長女のお前はお節介だからそう言うのだ。だけど俺がゆっくりと死を待つのはお前との時間を過ごしたい、だなんて。ああ俺もお前も、我儘だよ。だけど、

「愛してるよ」

それだけは確かだ。


【ペン回し】

例えば、寝癖がついているその髪の毛が好きだ。そして、これはくせ毛だと威張る偉そうな顔も好きだ。

細くて俺が握ればすぐに折れてしまいそうなその腕も、強そうに見えて弱い所も、でもやっぱり強いところも好きだ。

「…何考えてるの?」

向かい側に座って勉強してた彼女が顔を上げる。その顔は怪訝で面白い。

俺はカチャリとペン回しを止めてニヤリと笑ってみせた。

「何にも?」
「どーせまたやらしいこと考えてたでしょ」
「さあねー」
「そうなんだ…」
「ちげーよ」

即答で否定した俺を見ながら薄く笑う彼女は俺の手に視線を移した。

「ペン回ししてる時は、何か考えている時」
「え?」
「あんたの癖」
「俺の事よく見てるねー」
「…当たり前でしょ」

たまに素直な所も愛しくてたまらない。

「…大学、受かろうね」
「おう」


例えば、俺が勝手にお菓子をつまみ食いした時の君の怒った顔が好きだ。

だけどいつも最後には笑う君が好きだ。そう、最後の最後も。だけど、涙を見せない強がりな君は、好きじゃない。

「笑ってたな、あいつは」

最後の君の姿を思い出すよ。


「大学受かろうね」

受かるに決まってるだろ。

俺はカチャリとペン回しを止めた。





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