スマイルチェンジ
「島さん、」
「なんでしょうか?」
「本当、愛想無いな」
「言いたい事はそれだけですか。さよなら」
「待てよ!」
あー、なんだよ。私は暇じゃない。これから委員会だってある。あんた達クラスの為に委員会に行くというのに。
この男は私の邪魔ばかりしてくる。
「うん、島さん凄いと思うよ。ジャンケンで負けて委員長なんて、凄く運が良くていいと思う」
「運が悪いの間違いよ」
「島さんが委員長になってくれたおかげで、俺は島さんという人を把握できたよ」
「…は?」
「ほら、俺、人覚えんの苦手だからー」
知らねーよ。私は彼を無視して廊下を進もうとする。が、後ろからせかせかと私を追いかける足音。
バッと振り返れば、彼はピタリとまるで動いてなかったかのように止まった。
「だるまさんが転んだ?」
楽しそうに笑う彼はえくぼができていて可愛らしい。しかしその笑顔には騙されないからな。
胸が高鳴ったなんて、言わないからな。
「ねー、島さん」
「…なに」
「もし、ジャンケン。島さんが負けてなかったら、」
「何よ」
「俺、島さんの事好きになってなかったのかなあ」
…今なんて言った?こいつ。
「どういう意味?」
「だからさ、島さんが委員長になったから俺は島さんの事を見るようになったということでね?島さんが委員長じゃなかっ」
「ちょっと!言ってる意味がわかんない!」
思わず声を張り上げる私。彼は切れ長の目を丸くさせる。
「え、気づいてなかったの?」
「は、」
目を丸くさせていた彼の目は細くなる。目尻にはまた可愛らしい皺が出来た。そして止まっていた足を動かす。
そしてにじり、と私に近寄ると腰を折って顔を近づけた。その顔は笑顔、ではあるが可愛くない。
「委員会、さぼっちゃう?」
妖麗な笑みは怪しく、一瞬で私はどこかへ落ちてしまった。