名前




※お馬鹿にも程がある系ランナー♀





桧垣センセーは、それはそれはすごい人だ。

何がすごいってそりゃ、ケンキューシャとしてのタンキューシンが深いところとか、シアワセソーって草のケンキューのダイイチニンシャってやつなところとか、他にもなんかよくわかんない小難しい偉いことをしているところとか、その小難しい話の幾つかでもあたしにも分かるように話をしてくれるところとか、ケンキューシャとしてのタンキューシンが深いところとかいろいろあるけど、中でも一番すごいところは、どっかの有名らしい大学のありがたいキョージュ先生でも匙を投げたのあたしの滅茶苦茶な足首の怪我をきれーさっぱりに治してくれたこと、これに尽きるだろう。

そう。センセーは。
あたしの怪我を治してくれたひと。



「はあ、はあ、はあ…。…先生先生センセーセンセーせんせーせんせー、せーーんせーーっ!」
「はいはい、今日は何の用ですか」
「みてみて!コレ!」

じゃあーんっ!首にかけたままのストップウォッチをセンセーに向けて掲げる。診察室の椅子でカルテに目を落としていた先生が、ちらりとこちらに目をよこした。えへへ、みてみてはやくみて!
センセーに少しでも早く見せたかったから、あたし、練習終わりにそのまま走ってここまで来ちゃったんだ!

「…驚いた。また記録更新ですか」
「えへへ!」

あたしはマラソンランナー。全国各地から選りすぐりの選手が集められた紺黒高校にスポーツ推薦で入学して一年と少し、そこでオーバーワークによる怪我を経験して半年と少し。
一度は怪我のせいで…っていうよりそのお偉いダイガクキョージュ先生の診断のせいで開拓分校ってとこに転学しなきゃいけなくなったんだけど、なんとビックリ、転学先で教えてもらった桧垣センセーのとこに来たらそれが治療できるって言うじゃないですか!
治療して貰ってリハビリ頑張ったあたしは見事再び本校に再入できて、今は来年の試合に向けての基礎練習やからだ作りの時期なのだ。だからこそ本校に通ってるにも関わらずセンセーの診療所まで顔を出すことが出来てるんだよね、うひひ。

「次は自己新出せるまでは来ない〜って言ったでしょ!センセーに会えない悲しみをバネに、なまえはまた一歩大人の階段を飛び上がったのですっ!」
「飛び上がってしまっては一段も変わらないでしょう。それに貴方が来なかった期間なんて高々一週間じゃないですか」
「その高々ないっしゅーかんが、私の壁を乗り越えるおっきなげんどーりょくになるのです!」
「はあ」

いひひひっ!
センセー、桧垣センセー。あたしの怪我を治してくれたひと!

あのねあのね、桧垣センセーって凄いんだよ!あたしって頭良くないし、マラソン以外はほんとになぁーんにも出来ないような奴で、なのに去年それすら出来なくなってしまったんだよ。ダイガクキョージュのあたしなんか到底敵わないぐらい頭の良い先生が匙を投げちゃうぐらいどうしようもないそんなあたしの足をね、もう歩けないかもって、歩けても以前のようには動かないだろうって言われちゃって事実どれだけ念じても怒っても叫んでもどれだけ泣いてもぴくりとも動かなかったあたしの足をね、また動かしてくれたんだ。

あたしの唯一の出来ること、『走る』ことをね、もう一回あたしにくれたんだよ!


「先生あのね、あたしね、センセーのこと、大好きだよっ!」
「ほう。ありがとうございます」
「えへへ…それでね、」

ある日とても良いことを考えたの。とても偉いキョージュ先生。あのおじさんが治せなかった怪我を治してくれた桧垣センセー。
ひょっとしたら、あたしが活躍したらした分、その偉いキョージュ先生より桧垣センセーの方が凄いってことになるんじゃない?これ、ミョーアンでしょっ!

「だからあたし、頑張るからね!もっともっと頑張って、頑張るから!」


センセー、桧垣センセー。あたしの怪我を治してくれたひと。あたしの大事な、だいーっじな恩人なんだ。
この恩に報いるために、あたしもっともっと頑張らなきゃいけないの。もっともっと頑張って、もっともっと速くなって、世界で一番になれるぐらいに!



あのねだからねその時にはね、またあの時みたいにね、
『よく頑張りましたね』
ってね、あたしのこと、誉めてくれたら、それはとっても嬉しいなあって、そう思うぐらいバチは当たらないよね。



――――――――――――――――――
無上の信頼を浴びせられる先生の微妙な気持ちもいつか書きたいものだ


- 9 -


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -