名前




「ちょっとあんたまたでやんすか!」
「………」
「全く何度言ったらわかるんでやんすか、あんたがとんとんとんとん机を叩くせいで周囲の注目を浴びてオイラが居眠りできないんでやんす!」
「………」
「聞いてるでやんすか!反省したふりならサルでもできるでやんすよ!」
「………」

「おーいモッチー、次の授業だけど……ん?何やってんだあいつ」
「話してるのはみょうじさん…だね?」
「みょうじ?」
「うん、みょうじなまえさん。小学生の時から何度も全国入賞してるらしいよ、えっと、競技は…なんだっけ?」
「おいおい、大丈夫かよ」
「えへへ……なんとなく話しかけずらい雰囲気があるから挨拶ぐらいしかしたことないんだけどね」
「そうか?まあ、確かに落ち着いた雰囲気してるけど」
「小波はそう思うんだ。オレは、他人を寄せ付けないオーラに見えるんだけど」
「まあ、とにかく流石は天下の混黒ってところだな。…それにしても、長くないか?」
「え、何が?」
「あの二人の会話だよ。…それにオレの勘違いならいいんだけど、みょうじさん、睨み付けてないか?」
「嘘。…うーん…睨み付けてる…とまではいかなくても、ずっと黙り込んでるし、機嫌は良くなさそう、かな」
「まったく餅田はしょうがないなあ…」
「え、ちょっと小波?待てよ!」

***

「よっ!」
「わっ!…って、あんた達でやんすか。いきなり後ろから話しかけるなでやんす!」
「悪い悪い。えーと、みょうじさんだよね?」
「…そっちは小波くんだよね。こんにちは」
「なんで小波君相手だとそうやってさらりと…」
「まあまあ。で、二人ともどうしたんだ?なんだか喧嘩していたみたいだけど」
「……。」
「別にそんなんじゃないでやんす!ただこの女が授業中にトントンうるさくてオイラが居眠りできなくて困ってるんでやんす」
「…それ、いいことなんじゃないか?」
「野球に人生かけてるオイラにとって、貴重な睡眠時間を取られるのは大変なことなんでやんす!」
「…ごめんね」
「謝ったって変わらないんじゃ意味ないでやんす!」
「…。ええと、じゃあ、みょうじさん、ティッシュかタオル持ってる?」
「うん。…あ」
「そうそう。こうして畳んで机に置けば、音も出ないんじゃないか?無意識にやってることなら直すのも難しいよな」
「ありがとう。便利だね、これ」
「……………。」
「ううん、どういたしまして…って、餅田?」
「…餅田君?」
「小波君はズルいでやんす!!!」
「はあ?」
「そうやっていつもいいところばっかりオイラの前で掻っ攫っていくのでやんす…むきー!」
「あっ…」
「行ったな」
「行っちゃったね」
「次の時間、数学だよな」
「鬼の数学だね。」
「………オレたちは支度をしよう」

***

「はあ…今日も、楽しい話題で、おしゃべりできなかったなあ…」




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