ジタンは自分よりうんと小さい、蒼髪の女の子に問い掛けられた。
「ジタンの家族って、どこに住んでいるの?」
旅の途中、蒼い髪に大きな黄色いリボンを着けた少女、エーコに好意を持たれ、色々な事を質問されてきた。主に好きな女の子のタイプについてだったが。
ジタンは先の質問に対して少し苦笑いをしてみせた。
「家族か…物心をついた時にはタンタラスにいたから、家族のことなんて考えたことなかった」
「リンドブルムで生まれたわけじゃないの?」
「ああ。家族のことは覚えてなかったけど、生まれた故郷が違う場所だったってことは、覚えてた」
故郷がどこにあるのかまでは覚えてなかったんだけどな、とジタンは再び苦笑いをした。
「…寂しくないの?」
「えっ?」
俯きながら、ぽつり、とエーコが呟いた。今度は顔を上げて、もう一度ジタンに訊ねる。
「ひとりでいて、寂しくないの?エーコは…‥モグたちがいてくれたけど、それでもやっぱり、……‥寂しかったから…」
少しずつまた俯くエーコに、ジタンはエーコの頭を撫でた。
「…俺も小さい頃は寂しかったんだと思う。生まれた故郷がどこにあるのか分からないのに、がむしゃらに探してた。家族に会いたかったのかもな」
でも、とジタンは続けた。
「家族はどこにいるのか分からないけど、今の俺には仲間のほうが大事」
優しく撫でていたエーコの頭を今度は豪快に撫でた。くしゃくしゃと髪の毛がこすれてボリュームを増していく。これにはさすがのエーコも反抗した。
「もう、ジタン!髪の毛みだれちゃったじゃない!」
「あははっ、わりい。なあ、エーコ」
「? なあに?」
「今のお前は、寂しい?」
「…えへへ、ジタンと一緒ならへーき!」