沈黙の春(草薙)

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第五弾 草薙と遊作男夢主

「斎藤君、ちょっと良いか?」
「?何ですか、草薙さん?」
最近、遊作が連れてくるようになった先輩の斎藤拓真。LINK VRAINSの決闘者であり、リボルバーと何かしらの関係性があるらしい。暫く監視目的で目の届く範囲に置いていたが、思いの外遊作が懐いた。それも、思いもしない方向に。
「中に入ってくれ、外では少しな…」
言い淀む草薙に大人しく車に乗り込む斎藤。根は正直者なのだ。
「斎藤君、余りこういう事に首を突っ込むのは野暮だとは分かっているんだが、年長者として物申したい。」
「??なんでそんなに改まっているんですか?」
「ズバリ聞くが、遊作と付き合ってるだろ?」
「まあ…付き合ってるだろ、って…先輩後輩だし……」
視線を逸らして頭を掻く斎藤に草薙は追撃をかける。
「そう言う意味じゃ無くて、もっと進んだ関係だろ?隠さなくて良い、察している。」
「!!うぇっ、そそそそんな!」
慌てふためいて顔を赤くする。斎藤の様子に初心な印象を受ける。
「遊作との付き合いは長い、最近遊作が斎藤君に対する雰囲気が柔らかくなったりしてたしな。」
そこで草薙は一区切り置く。
「だが、敢えて言いたい。高校生同士、節度ある付き合いをしろ。」
「…は!?」
「斎藤君の方が一歳とはいえ年上だし、体格も良い。遊作に余り無理させないでやってくれ。」
「むりさせない…」
草薙の言葉を反芻する斎藤はそれっきり黙り込んだ。

それから約半月。草薙は斎藤に違和感を感じる。どことなく、年にそぐわない雰囲気があるのだ。
「やあ、斎藤君。お疲れかい?」
「草薙さん…そんなところです。エスプレッソをダブル下さい。」
斎藤は殆ど軽食を頼まない。筋トレを趣味とする斎藤は脂質や糖質を控えている。しかし、今の斎藤は少し肩や腰に丸みがある。
「斎藤君太ったか?何だか丸くなったな。」
今の方が年相応で良いと思うがな。
そう草薙が添えると、斎藤は微妙な顔をする。
「体重は変わらないんですけど、脂肪が…特に腰回りに……」
そういって、自身の腰を見やる斎藤に、草薙はギクリとする。
「拓真さん。」
「あ、遊作…」
「拓真さん、今日も家に行って良いか?明日は休みだし、出来れば泊まりたい。」
遊作は何てことの無いように斎藤に言う。何時もならなんとも思わない場面だが、今は違う。斎藤は、チラリと草薙を見て、溜息を吐く。
「良いよ、晩飯は煮物と焼き魚だけど。」
「構わない、拓真さんの料理はどれも美味しいから楽しみだ。」

とても仲の良い高校生男子の二人組。片方は背が高く、ガタイが良い。
しかし、そのガタイの良い方の耳の裏に見付けた赤い印。
草薙は見当違いな忠告が、逆に助長してしまっているその事実に頭を抱えた。


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