彼のデュエル

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第七弾 プレイメーカーとAiと遊作男夢主


In to the VRAINS!

自身の体を沿うようにアバターが作られる。体躯は変わらないが、髪の色が赤味を持ち、逆立つ。
定期考査を終えて久し振りにログインしたLINK VRAINSは少し張り詰めていた。ハノイの騎士がプレイメーカー狩りを行い、手当たり次第にデュエルを挑んでいるらしい。何ともはた迷惑な話だ。純粋にデュエルをしたいだけの斎藤ーこと桃髪は、そう言ういざこざは、余所の電脳空間でやって欲しいと思う。
しかし、そうは問屋が卸さない。
ハノイの騎士を名乗る輩が桃髪を襲って来たのだ。
「……はあ。本当はデュエルを楽しみたかったんだがな。」
「お前がプレイメーカーとよく一緒に居るのはログで確認済だ!そのお前を捕まえたら、プレイメーカーを誘き出せるって寸法だ!」
「興味ないね。」
そう言うと、桃髪はデュエル開始の宣言をした。

『?おい、プレイメーカーさま!あれを見ろよ!!』
「?」
遊作こと、プレイメーカーは草薙からハノイの騎士の出現の一報を受け、LINK VRAINSにログインした。そこで見た光景は、今までの最弱決闘者として誹られる桃髪とハノイの騎士とのデュエルだったが、様相が何時もと異なっていた。普段はHERO主軸の彼が、見たことの無いモンスターを従えていた。
「2100の攻撃力など、恐るるに足らず!《クラッキング・ドラゴン》で《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》を攻撃、《トラフィック・ブラスト》ォ!!」
「この瞬間、《サイバー・ドラゴン・ズィーガー》の効果を発動。《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》を対象にして、彼の攻撃力と防御力をそれぞれ2100上げる。」
「4200!?しっしかし、《クラッキング・ドラゴン》は自身のレベル以下のモンスターには破壊されない!残念だったな!」
「そうだな、代わりに超過分のダメージを受けてくれ。」
そう、気怠そうに答える桃髪は普段の嬉々としてデュエルに興ずる姿は形を潜めている。
そのままターンエンドしたハノイの騎士のフィールドには《クラッキング・ドラゴン》と《BM-4ボムスパイダー》でLP2800、対する桃髪のフィールドには《サイバー・ドラゴン・ズィーガー》と《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》の二体で無傷。
『サイバードラゴン?何だかサイバースに似てるな!』
「黙れ。」
「俺のターン、ドロー。」
カードを新しく引く桃髪。
「俺は《プロト・サイバー・ドラゴン》を攻撃表示で召喚。」
「おっと、600のダウンとバーンダメージを受けてもらうぞ!」
「…このカードはフィールド上に表側表示で存在する限り 《サイバー・ドラゴン》として扱う。《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》のモンスター効果で除外し、彼の攻撃力を2100アッ「《BM-4ボムスパイダー》のモンスター効果だ!自身と《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》を対象として発動、破壊する!」
「…」
「更に、お前は破壊された自身のモンスターの攻撃力の半分のダメージ、1050を受ける!」
「…ふん。」
『合計で1650のダメージか。大したことないけどよ、あのヘビモドキじゃ何も出来ないぞ?』
Aiは心配そうに桃髪のデュエルを見守っている。かく言うプレイメーカーも初めて見る桃髪に違和感を感じる。
「《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》が効果によって墓地へ送られた場合、 機械族の融合モンスター1体をEXデッキから特殊召喚できる。来てくれ、《 サイバー・エンド・ドラゴン》!」
「これはこれは攻撃力4000!しかし!《クラックフォール》の効果で高々2000!しかもダメージまで負うとは、所詮は木っ端決闘者だ!」
ハノイの騎士の高笑いが聞こえる。勝利を確信し、桃髪を罵る。
『うあーん!さらに2000もダメージって、残りLP350じゃん!何か凄いモンスター使ってると思ったら、やっぱりアイツ弱いじゃん!』
「このターンのバトルフェイズで《クラッキング・ドラゴン》は破壊できる。後は相手の出方次第だろう。」
そうなのか?と、疑わしげな目でプレイメーカーを見やるAi。そうとは知らぬ、桃髪は涼しげにデュエルを続ける。
「バトルフェイズに移行する。俺は《サイバー・ドラゴン・ズィーガー》の効果で《 サイバー・エンド・ドラゴン》の攻撃力を2100アップさせ、手札から速攻魔法発動《リミッター解除》。」
「何だと!?」
「仲間の力を授かった《 サイバー・エンド・ドラゴン》は更に己の限界を超える!《 サイバー・エンド・ドラゴン》で《クラッキング・ドラゴン》を攻撃する!《エターナル・エヴォリューション・バースト》!!」
桃髪の声に応え、咆哮を上げる三つの首から光が放たれる。それは一つに収束し、《クラッキング・ドラゴン》を貫き、ハノイの騎士を吹き飛ばす。
「くそっ、こんな筈では…!」
「立ち去れ、俺に今後関わってくれるな。」
ハノイの騎士は悔しそうに何処かへと転移する。桃髪はそれを追うことも無く、ただ消えたそこを見ていた。
『桃髪!お前ホントはすごいんだな!』
「…プレイメーカーとそのAI。高みの見物とは、随分と高尚な趣味だな。」
桃髪の揶揄にプレイメーカーは居心地が悪くなる。
「そんなつもりは無い。…デッキを変えたのか?」
「…複数デッキ持っているのは軽蔑するか?」
「そう言う訳では無い。」
「絶対勝ちたかったからね。誰かさんのとばっちりで捕まるなんて馬鹿臭いだろ。」
「…」
『お前…性格悪いな。』
Aiの言葉に桃髪は肩をすくめる。
「俺みたいな善良な決闘者としては、ハノイの連中も、君にもここから退出願いたいモノだよ。」
「それは出来ない、俺には果たさなければならない目的がある。」
「……それは本当に君がしなければならないのか?」
「そうだ。」
力強い瞳に、桃髪はふうん…と、気のない返事を返す。
「なんにせよ、俺には関わらないでくれ。俺は静かにデュエルをしたいだけだ。」
『デュエルって、何でわざと負けてるんだ?』
「わざと?」
『そうだろ?サイバードラゴンならあんな風に勝てるのに、何時ものデッキだと負けっぱなしじゃないか。』
「勝つことが目的なら、サイバードラゴンでいいさ。俺はそうでは無いから。」
『どう言う事だ?』
皆目分からぬと言いたげなAiに、桃髪は踵を返す。
「所詮は作り物の思考。事象の観察は出来ても、そこから考察できないんだな。」
『な、なんだってぇ!!』
そのまま桃髪はログアウトした。詰まらないデュエルだったな。と、落胆しながら。


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