後輩とは

#いいねの数だけ自カプSSを書く
第六弾 遊作と遊作男夢主

好きです、付き合って下さい。」
夕日の差し込む学び舎の踊り場に女子生徒と男子生徒が一人づつ、遠くには生徒の喧噪と帰宅を促す放送が聞こえる。
「ごめんなさい。」
#斎藤$は頭を下げる。女子生徒はそれに泣きそうな顔で、どうして?私は可愛くないですか?と、言い募る。
「ごめんなさい、学業を優先したいから、付き合うとか考えられない。」
そう言うと、女子生徒は顔を真っ赤にして頬を張ってきた。何やら怒鳴りつけたと思ったら、走り出した。
「……普通好きな人の頬を叩く?」
斎藤は名も知らない女子生徒に溜息を吐いた。

夕飯の買い出しをする。今日はアサリの半額がある。コイツをキャベツとニンニクと鷹の爪で炒めて塩を振ると美味い。それに焼き魚と汁物でも付ければ十分だろう。細い後輩の姿を思い浮かべながら、デザートに牛乳餅でも作ろうか。と、小豆缶を買う。
「ただいまー…遊作来てんならドア開けてくれ!」
「…お帰り、拓真さん。」
そういって、遊作はドアを開ける。斎藤の自宅の合鍵で入り込んだ遊作は、持ち込んだ私服に着替えて我が物顔で寛いでいる。
「洗濯物取り込んでくれたらいいのにー。」
湿気始めている服に溜息をして、室内干しにする。遊作はすまなかったな、次は気を付ける。と、答えた。どうせ次も同じ会話をするのだと、嘆息する。
「顔が腫れてる。」
「えっ?まじ?ま、いっか。飯作るから、出来るまでにテーブル開けとけよ。」
そう言うと、斎藤は食事の支度を始めた。

「イタダキマス。」
食前の挨拶をそこそこに、アサリとキャベツの炒め物を食べる。しゃきりとしたキャベツの甘みとアサリの旨味が良い塩梅だ。殻ごと食んで、ちゅるりと身を吸い出すと、くにくにと海の香りがする。遊作を見やれば、同じように炒め物を食べている。心なしか、その目は輝いているようだ。
「遊作、旨いか?」
「ああ。」
斎藤の問いに、間髪入れずに返す遊作に笑みが零れる。こういう時間をあの女子生徒と過ごせるだろうか、それは分からないが、多分無理だろう。
飲み込んだ魚の骨が喉を掻いた。

シャワーを済ませて二人で課題をこなす。遊作が質問してくること何て無い。斎藤と遊作はただ無言で勉強する。カラリ、と、氷がなる。
「今日、遅くなったのはその頬が原因か?」
突然話題を振られて、反射的に斎藤は遊作を見る。遊作はパソコンから目を離さない。
「ああ、ちょっと告白されちゃって。断ったら叩かれた。」
「何て断ったんだ?」
「勉強に集中したいって。」
そう答える、遊作が斎藤へ乗り出す。頬に触れて、顔が近付く。そのまま目を閉じて、次に触れる感触に酔った。

まだ薄暗い時間に起きた斎藤は体を起こす。学業を優先したいからと答えて、同性の後輩と不純交遊を結んでいる。このままで良いはずが無いのは分かる。分かるが、手を離したくない。この感情が恋とか愛なのか、ただ利用しているだけなのか分からない。
隣で眠る遊作を撫でる。深く眠っているようで、反応がない。ベッドを出て、衣服を身につける。表に出ると、太陽の光が線上に空を貫く。
その時が来るまではー
斎藤の呟きは朝靄に溶けた。


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