ギャリーさんと絵画娘
※忘れられた肖像endのギャリーさんを意地でも助けたくて奮闘した結果の産物。メアリーも一緒に外に出しちゃおうぜ的な。ギャリーさんのオネェ口調が一部ログアウト。一人称も変わっちゃう。絵画ヒロインで作品名は「上に立つ者」。作品内ヒエラルキー最上位(メアリーを除く)。黒猫の姿でイブ達の手助けをしていた。メアリーが燃やされた辺りからの話。
「メアリーが燃やされたみたいね…」
私はギャリーを膝枕した状態で呟く。きっとイブはもうすぐあの絵の所へ辿り着くだろう。
「大丈夫、貴女なら大丈夫…」
まるで言い聞かせるような口調で、それでいて誰にも届かない言葉を呟く。不意にギャリーへ視線を向けるとバッチリ目が合った。
「き、きゃぁああぁあ!」
「何だ起きてたのか。おはよう」
「え、あ、おはよう…って違う!アンタ誰よ!アタシに何しようってのよ!?」
随分元気なようで何より。って感心している場合じゃないか。
「私が誰なのか分からないのか?」
「し、知らないわよ!」
「まぁこの姿で会うのは初めてだから仕方無いか。私は『上に立つ者』だ」
「え!でもアンタ猫だったじゃないの!」
「あれは仮の姿だよ。こっちがホントの姿」
ギャリーは目を見開いたまま固まってしまったが、あまり時間もないので話を進めさせて貰うとしよう。
「呆けている所悪いが、お前自分がどうなったか分かるか?」
「え?えーと確かメアリーに薔薇を奪われて…!」
「ちゃんと覚えてるみたいだな」
「アタシ死んだ筈じゃ…」
「うん、死んだよ」
「じゃあ何でアタシ…」
「…生まれ変わったんだよ。ゲルテナの作品として」
「作品…ですって…?」
驚くのも当然だよな。そりゃあ誰だってお前作品になったんだぜなんて言われたら驚くに決まっている。…勿論私だって…
「驚いてるとこ悪いけどさっさと行くわよ、時間が無いわ」
「い、行くってどこへ!?アタシ全く話についていけないんだけど!」
「行き先は出口。話はついてこなくてもいい、どうせ忘れるんだからか」
男ならうだうだ考えず黙ってついてくればいいんだよこのオカマが、と言おうと思ったが言いでもしたら落ち込みそうなので心にとどめておく。
「着いたぞ」
そうこうしているうちに一つの大きな絵画の元へ辿り着いた。
「これは…」
「こっから外に出られる」
私がそう言うと、ギャリーはこっちが驚くほど驚いた。
「外に出られるってアンタさっきアタシに作品になったって言ったじゃない!どうやって出ろって言うのよ!?」
「そんなにピリピリするなよ。少しは落ち着け」
「時間が無いって言ったり落ち着けって言ったりワケわかんないわよ!」
「時間が無いのは事実。でも此処まで着たから落ち着いて大丈夫なのも事実。私は本気で貴方を助けたいだけなんだ。だから冷静になってくれ」
私はギャリーと目を合わせてそう伝える。ギャリーは何故か慌てふためいた後深呼吸をして私に一言ごめんなさいと言った。
「取り敢えず貴方にはこれを」
そう言って私は薔薇を出しギャリーの手に握らせた。ギャリーが物凄く驚いているのはすぐにわかったがそんなのは無視して話を進めさせてもらうとしょう。
「この薔薇があればきっと外に出られる筈。なんてったって花言葉が無限の可能性だからな」
「ちょっと待ちなさいよ!なんなのよこの薔薇は。造花って訳でもなさそうだしいったいこれは…」
「…これはレインボーローズ、私の薔薇よ。元々白い薔薇だったんだけどいつの間にかこんな色になってた」
「…アンタいったい何者なのよ…」
「……私はただの絵画よ。ここにいたメアリー以外の全ての作品の上に立つ者。まあもうメアリーはいないから本当に最上位になったわけだけど」
「どうして絵画の貴女が本物の薔薇を持ってるの?貴女本当は…「ギャリー」…何よ」
「…あのね、私はもう駄目なの。自分が作品であることを認めてしまったから、認めざるを得ないくらい長い間ここで過ごしてしまったから、だからもういいのよ、この薔薇は私の物であってもう私の物じゃないから」
「何よそれ…そんなのおかしいじゃない!貴女も外の人間なんでしょ!?外に出たいと思わないの!?」
「…メアリーは悪くない。悪いのは全部私。あの娘に寂しい思いをさせてしまった私が悪いの。だから私が外に出る資格はない。そう考えるようになってしまったからもう外に出ることは出来ない」
仕方ないのよと力なく笑った私は黄色い薔薇をギャリーに渡した。そして力いっぱいギャリーをあの絵に押し込んだ。
「!なにしてんの!?」
「どうやら大丈夫そうね。ギャリー、その黄色い薔薇はメアリーよ。絵は燃えてしまったけどあの娘の思いが強かったお陰でそれだけ残ったみたい。もしメアリーも無事外に出る事が出来たら、あの娘にいっぱい幸せを教えて上げて。お願いね」
「アンタはどうするのよ!?」
「…この世界と一緒に消える事にするよ」
「消える…?どういう事よ…?」
「メアリーが居なくなってしまった以上この世界が存在する理由がないからね。もうこの世界にはこの絵があるこの空間しか存在していないのよ。他は全部消してしまったわ…貴方達が確実に外へ出た事を確認する方法はないけど、そこまで行ったのなら問題ないわね。ま、精々残りの人生を謳歌すればいいわ。…そろそろ此処も終わりね…それじゃあ…」
元気でね、そう言う筈だった。左手を思い切り引っ張られた私は驚きで声が出なかった。
「ふざけんな!んな泣きそうな顔で中途半端に格好つけてんじゃねぇよ!勝手に諦めてんじゃねぇよ!」
「え、ちょ、ギャリー…さん?」
「てめぇがなんと言おうと俺はてめぇも連れていく!」
「む、無理に決まって「無理じゃねぇ!!」!」
「この薔薇の花言葉は無限の可能性なんだろ!だったらこの薔薇の持ち主にだって可能性があるにきまってんだろうが!うだうだ言ってないで黙って俺に着いて来い!!」
そこからはあっという間だった。絵の中に引っ張りこまれた私の心は驚くほどに満ち足りていた。私には代償が無いから、絵に入れたからと言って外に出られるとも限らない。むしろこのまま消えてしまう可能性の方が高い。でもこんなにも暖かい気持ちになれたのだから、このまま消えても構わないかもしれない。そんな事を考えていた私は、可愛らしい瞳を大きく見開いているメアリーと、その隣で顔を真っ赤にしながら頭を抱えているギャリーの姿を見たような気がした。
オネェ口調じゃないとギャリーさんはただのイケメンになってしまうわけだけど、完全にアイデンティティー失ってるよね?
それってどうなのギャリーさん?
あ、力尽きたので続かないよ