シングルトレイン乗り場。所謂ホーム。そこに一人の白い男、サブウェイマスター・クダリが居た。ただそこに居るだけならばホームに居る利用客も、サブマスのクダリさんだー、本物だー、サインでも貰っちゃう?程度の反応しか示すことはなかっただろう。しかしながらそのサブマスは頻りにホーム内で行ったり来たりを繰り返し、あまつさえ顔面蒼白でぶつぶつと独り言を呟いている為、皆声を掛けるどころか視線を向ける事もない。

「アサオが可笑しい…いや、可笑しいのはいつもの事だけど…あぁ、ノボリまだかな…一大事なのに…」

間もなくトレインが来るというアナウンスを聴きより一層ソワソワするクダリに、最早引くしかない利用客。到着したトレインから降りてくる挑戦者や部下であるクラウド等には目もくれず、一直線に向かうは己の片割れの元。

「ノボリぃい!一大事!大変!アサオが変!」

「何ですかいきなり。アサオが変なのはいつもの事ではありませんか」

そうなんだけど、そう発したクダリは続けて例の部下が普段からは想像出来ない程の仕事っぷりを発揮した事をノボリに伝えた。

「ブ、ブラボー!それは素晴らしい事ではありませんか!これからもその調子で頑張って頂きたいですね!」

「ノボリ…顔真っ青だよ…」

「アハハ!…ハッ!」

簡潔に言おう。ノボリが倒れた。

「ノボリ!?」

完全に目を回している片割れに開いた口が塞がらないクダリだが、このままにしておくわけにはいかないので近くで様子を見ていたらしいクラウドを捕まえ共に運ぶ事にする。

「まさか倒れる程とは思わなんだ…」

「なあボス。アサオが仕事しとった的な内容の話が聞こえて来たんやけど…ホンマか?」

「ぼく嘘吐くならもっと現実味の溢れた嘘吐く」

「せ、せやな…」

真っ青な顔をしながら薄ら笑いを浮かべるクダリに、これはマジだと悟ったクラウドだった。