やっぱり、太陽の光はダイキライだ。目に痛い。眩しい。紫外線が肌に刺さるこの感触だって何一つ良いことが無い。それに俺は植物ではないから光合成も必要無いんだ。ならもうすべき事なんて家に居るっていう選択肢一つしかないと思わないか。
なのにどうしてこうなったのかとかそういうことを理解する前に連れ出されたので、反抗することも嘆くことも出来なかった。追い出されるように家から出された直後にはガチャリ、と鍵を掛けられたような音も聞こえたので家へ戻ることすら出来ない。なんという八方塞がり。


「なんで俺が日用品の買い出しに行かなきゃいけねぇんだろうか」
「あと、トイレのかみと、だいどころのせんざいと、それから」
「わかってるよ」


隣には兄貴の殴り書いたような字のメモを握りながら、目当てのものがないか探している慶次がいた。俺とは違い、外に出たがるアウトドア派だ。この買い出しにも本来は俺だけに頼まれたもの(むしろ強制だった)なのに、バカ親に駄々をこねてまでついてきたらしい。
だからって慶次に当たるのは筋違いだろう、俺。自棄気味に言ってしまった言葉にマズったと、少しうなだれたポニーテールを見て後悔する。俺が外を好まないことを慶次は知っているから、怒らせてしまうのは自分の失態だと思っているんだろう。この推測は間違っていない筈。


「sorry、慶次。気にすんな」
「きにしてないよ。おれ、まさとでかけられて、すげーうれしいの」
「…そうか、そうなのか」


真っ直ぐな笑顔で言われてみると少しだけ嬉しい、と思った。本来なら乗り気では無い人間と一緒ならば行動意欲を削がれてしまうものなのに、こいつは楽しそうに横について歩く。子供って本当に底が知れない好奇心を持っている。慶次と同じ年の頃、自分も同じように尽きない好奇心を持っていたのだろうか。
目線の先に食器洗剤の売り場を見つけて、日頃愛用しているメーカーの洗剤まで駆け寄っていく後ろ姿を見つめる。ポニーテールが左右に揺れるのがたまらなく可愛かった。

小さい両手で洗剤を抱えて戻ってきた慶次の顔はとても満足そうだ。そんな様子につい上機嫌になった俺は、こいつくらいの年代で流行っているらしい五本槍の食玩を買ってやると約束した。自分の財布から出すわけねぇ、勿論後でバカ親からくすねてやる。


「シークレットだしたいから5つかってくれる?」
「…ちょ……!」


一度してしまった約束をやや後悔し、確信犯、なわけ無いとも思いつつ、どんな口実で食玩5つ程の小遣いを引き出せるかずっと考えていた。



非日常から逃げ出してみる




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