(女の子シリーズ)





11月の休日、昼下がり。秋から冬に差し掛かる中でも、日差しが柔らかくて過ごしやすい気候。
股下がスースーする。晒された太股が、肌寒く感じる外気に触れて、ふるると震えた気がした。それに先程からファーがふわふわと首筋を擽り、どうにも落ち着かない。


「寒い」
「大丈夫、じゃないよね…」
「連れ出す馬鹿がいるか、普通」
「ごめんなさい…」


暫く掴まれていたせいか、手首がじんじんと痺れている。その元凶は勿論隣に座っている男であり、頭を垂らして絶賛反省中。両手を合わせ摩りながらその様子を横目で伺い、ふと、少し言い過ぎただろうか、と頭に過ぎったりした。

セールだったから思わず買ったけど身幅が小さかった。そう言って岳羽が洋服を抱えて部屋を訪れた時には、先の不安を予知して背筋にただならぬ冷や汗をかいた。
確かに数日前、自分は確かに男から女へと突如として転換してしまったわけだけれど、着る物が合わなくなっただとかそういうことは全く無く、色々仕様は違えど今まで通り男の生活をしていたのであり、女装癖なんて以っての外。だから勿論抵抗はした。だけど岳羽の好奇心に満ちた瞳と揺るがない気迫に押し負けてしまったのが事実。
今年流行りだというノルディック柄のニットワンピースだけの筈がいつの間にやらあれこれ追加される始末。ニット帽、レザー生地のジャケット、ムートンブーツなど、殆ど着せ替え人形状態だった時に、望月がやってきた。ノックもせずに部屋の扉が開き、この姿を見るや否や手首を掴まれ寮の外。


「可愛かったから、その、つい」
「言い訳は聞かない主義なんだ」
「手厳しい…!」


愛用のMP3プレーヤーも置いてきてしまったし予定も狂わされて、今日は散々な目に遭っている。服だって自ら進んで、喜んで着ているわけではない。


「ねえ、折角だからこのままデートしちゃおっか」
「ふざけてる?望月くんふざけてる?」
「ふざけていない、僕本気」


さりげなく両手を取られて握りこまれる。顔はへらりとしているのにその手を掴む力は、本気だという確実な意志を持っているように強かった。
不思議な奴だと思う。女だと知るなり、いきなり交際を申し込まれたことも苦い思い出。そしてこいつの「見境なく女性に声をかける」素行も充分把握していたので今までずっとあしらい続けてきた。あの告白だって鵜呑みにはしていない。自分は飽くまでも男で在りたい。
そう思う反面、今までとは違う望月の接し方に戸惑った。どんな女性にもこのように接しているのかと思えば、何処か不服に思うことがある。

可笑しい、確実に矛盾している。


「…誰かにバレるかもしれないし」
「帽子を深く被ればだいじょーぶ!あまりにも可愛いすぎるから誰も君だと気付かないさ」


ぎゅっぎゅと目まで覆われるくらいに帽子を下に引っ張られる。それにしても、よくもまあ次から次へと口説き文句がぽんぽん出るもんだ。しかも、だ。首を少し傾けて、ね、お願い、などと言われてしまう。知っていてやっているのだろうか。自分は、彼のこの仕種にすこぶる弱いという事実を。


「君の無言は、肯定ってことだよね」
「もう…どうでもいい…」


どうにでもさせます!揚々とした声。溜息さえつく暇もなく手を繋がれる。今日はこの手を離してくれそうにもないので、彼の赴くままに付き合ってみようと思う。



諦め時のようです



あお様リクの「綾♀主」でした!
遅くなりました…!そしてにょたろ話の続きにしちゃいましたが大丈夫だったでしょうか…?
べらぼうに可愛い服がよくわからず、もれなく私の趣味になりました。でも、女の子の服でデートする綾主を想像して盛大に萌えました。鼻血ものでした。
リクありがとうございました!



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