(4主+3主)



少年は、永遠を持っていた。
永遠に老いることのない美しさと、永遠に囚われる束縛と、永遠に広がる彼の宇宙があった。
様々な形のそれは、綺麗所だけを集めた宝石のように甘美であったが、その真理に潜むものは残酷な運命の代償ということだけだ。


「だから、俺は連れ出すよ」
「どういう理屈なの、ソレ」


意味がわからない。君は笑って、納得のいかない、そういった顔をしている。そうだなぁ、無理もないか。
ただ、宝石のようにお飾りとして存在させておくなんて、俺には出来ないことだと思ったから。君は、この額縁を乗り越えて、命の暦を続けていくべきだと思ったから。

世界は、今日も廻っている。
霧に包まれることもなく、平穏な日常を歩んでいる。それは俺たちが、醜い四肢を晒した神の名を宿す彼女を止めたことにより勝ち取ったものだった。
そう、思っていたのだけれど。いや、俺たちが成したことに対しても、大切な意義がちゃんとあった。
でもそれ以上のことを、今目の前に立つ君は果たしていて。

心臓が、大きく脈を打つ。生を、死を、身近に感じて、指先が酷く冷え始める。
目を背けたくなる衝動はかなぐり捨てるんだ。怖じるな、嘆くな、前を見ろ。格好悪いところを見せるつもりなんて端から無いんだろう、俺。


「心意気は買う、でも…うん、そうだなぁ、残念だけどね」
「こっちだってそれ相応の覚悟はしてる。実力行使だって厭わない」
「君のそういうところに、あの子たちは惹かれたのかな」


ちょっと羨ましい。
そう言って、口元に弧を描き美しい微笑を湛えた君の右手には、不穏なものが握られていたね。
それをこめかみに宛てがう君の、死を想う。彼の周りから重力が消えたように、服が、髪が、ふわりと浮いた。

滲む手汗をズボンの側面で乱雑に拭う。乾いた唇はぴりっと切れた。舐めればそこに、仄かな血の味を感じる。
俺に、彼を止められるだろうか。いや、止めなくてはならないのだ。終わりを教えてあげること。それがここに来た俺に課せられた最後のやり残し。


「駄々っ子に、離してもらえなくてね」
「事情なんて知らないよ。さぁ、始めよう」
「そうだね。…おいでよ、世界」


俺に出来ることは、多分これしか残っていなかったんだ。鈍く響いた銃声と、砕けたカードの声が重なった瞬間、混雑した思考は忘却回路へ連れ去られた。



もういないあなたを探しに参りました



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