(女主)





今、この時を、瞬間を、穏やかに、そして緩やかに過ごす人類へ。

私には聞こえます。数多の産声が。数多の悲しみが。日々増えゆく灯火のついた命と自ら燃えることの出来なくなった命とが交錯しあうことがとても幸せなことだということ。些細な日常ではわからないかもしれませんが、私にはわかるのです。それはとても儚くて尊いことですが命の輝きが最も際立ちます。貴方達が何を思いどう過ごすのか。それは他者が示すことではありません。どうか自分の意志で、自分が正しいと信ずるままに、有限の人生を生き抜いて下さい。

沢山の命を抱え、永久を刻もうとする世界へ。

人というものは、実に傲慢で貪欲で満たされない欲を持っています。どうかそんな人に嫌気を感じて見捨てないで下さい。滑稽だと嘲笑わないで下さい。人は必死に生きています。まるで運命に抗うように生きています。そして生きる為には世界が擁護してやらねばどうしようもありません。世界を規模に考えれば人はちっぽけです。それでもこの世界が必要不可欠なのです。



私が、心から愛したみんなへ。

どうか泣かないで。嘆かないで。これは仕方のない運命なのです。私は生まれてしまった時からこうなると決められていたから。私は「誰か」の代わりで「誰か」の為に眠りました。でもそれは私だけが経験したことではなく、その「誰か」も同じように眠っているのです。だから私は「誰か」に居場所を返します。そうすればみんなの記憶から私は忘却されるでしょう。でも悲しくはありません。私が生きたその場所は「誰か」のものかもしれないけど、私が生きたあの時間は確かに私のものでした。友達を作り、恋をして、毎日が楽しかった。此処で生きることが出来て良かった。



さあ、時間です。私は「誰か」に意志を継がれて生き続けると信じます。再び悲劇が訪れようとも、「誰か」を筆頭に、みんなは立ち向かっていくのでしょう。

(羨ましいとは言わない。だって私は望まれて生まれた訳では無かったみたいだから、)



私が消えて残るもの




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テーマ「人外ファンタジー」
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