(綾主)





こたつのテーブルに頬を付けてトロトロと微睡んでいる彼を尻目に、何か面白い番組はないかとチャンネルを片手にテレビを見つめる。年末恒例の生放送のバラエティ番組で変えていたチャンネルを止めて、シュールな演出に思わずクスクスと微笑してしまった。やはり年末となれば内容のクオリティも変わるのだと、しみじみと年の瀬の雰囲気を噛み締めた。


「りょーじ、みかんむーいて」
「えぇ、それくらい自分で出来るでしょ?」
「綾時の剥いたやつがいい」


依然としてテーブルには頬を付けたまま、じっとりとした視線で見つめられた。彼がこうして甘えてくれることなんて滅多にないし、ここは仕方ないなあ、と真ん中で詰み上がったみかんを一つ取って皮を剥いてあげる。暖かい部屋の中にふわんと柑橘系の匂いが広がった。
よしよし、我ながら綺麗に剥けた。白い部分もキチンと取ってあげる。そんな自信作を目の前に置いても、何の反応も見せない彼にちょっとムッとした。ちょっと意地になって、全部食べちゃうんだからね、と言うと、こたつの中からもぞもぞと手を出して拙い動きで口に運び出した。なんだかその姿が可愛くて、思わず頭を撫でてしまった。ちょっとだけ睨まれたけど気にしない。


「えい」
「わ、何するの、このっ」
「っ、…ちくしょう、やったな」


こたつの中に潜んでいた彼の足が僕の太股をツンと突いてきたので、こちらも負けじと彼の足の裏を自分の足の指でこしょこしょと擽ってみる。一瞬引き攣った顔をしたけれど、彼も仕返しというように足の裏を擽ってきた。

そんなこたつの中の小さな戦争をしている間に、テレビもふざけた雰囲気から一転して、来年へのカウントダウンを始めていた。彼も身体を起こして、みかんの最後の一切れを口に入れた。僕も思わず背筋を伸ばしてその時を待った。


「今年はお世話になりました」
「いえいえこちらこそ」
「来年も清いお付き合いでいきましょう」
「えー…」
「何だその返事は」


清い、って所に少し引っ掛かりを覚えたけれど、でも来年も彼と過ごせるのなら素敵な一年になりそうだ。

《あけましておめでとうございます!》
《今年もよろしくお願いします!》


「よろしくね!」
「はいはい、よろしく」

今年も彼と一緒にずっと笑っていられる一年になりますように!



おおみそか



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