(♀主とゆかり※女の子シリーズ)





「……はあ」


正直、すごく疲れた。朝からよくわからない身体の変化にどうすることも出来なくて、ほぼ護衛状態のアイギスには感謝するべきだろうけど一日中見張られていると窮屈で、そんなアイギスをもかい潜ってきた望月からはなぜかトイレでの告白を受けた。しかもどうしてこんな最悪なタイミングを奴は選ぶ。ああもうイライラする。
午後の授業も残るはあと一限だからこれが終ったら即座に帰ると決めていた。身体の変化からか、少しだけ怠い。何時ものことだけど今日はそれが顕著になっていた。


「おーい、死んでる?」
「あ…岳羽…」


顔を伏せていたから気付かなかったけれど机の横に岳羽が来ていた。目の前で手をひらひらと振られて、大丈夫?と訊かれた。平気、と一言だけで返すと、岳羽は一瞬何かを考えこんでから前の席の椅子を引っ張ってきて自分の目の前に座った。


「廊下でアイギスと綾時くんが珍しく全面抗争起こしてたけど、あれ君のせいだよね」「………知らない」
「ふうん?そうは見えないけど」


そうなんだ。全く以って厄介なことになったんだ。

トイレから戻った望月と自分を見たアイギスが望月を突き飛ばして、大丈夫でしたか、と必死な顔で訊いてきた。頷くと後頭部に手を添えられそっとアイギスに抱きしめられた。
(ちなみに今の自分はアイギスよりも少し低い背丈なわけなのだがそれに疑問を持たないクラスの奴らに心なしかイラッとした)
そんなアイギスの行動に、突き飛ばされて伸びていた挙句に心配する女子達に囲まれ満更でもない様子だった望月が反応して、間に割り込んできた。それからアイギスと自分にしか聞こえない声で、この子僕の子、と言ってアイギスを睨んだのだから相変わらず命知らずの馬鹿だと思う。

それから昼休みを巻き込んでの無言闘争が続いているから、もう無関係を装おうと決意するのも当たり前で。ただアイギスには「武力NG」と言い渡しているので、負傷者が出ないことを祈るばかりだった。


「ねえ、今日一緒に帰らない?」
「……いいけど」
「疲れも吹き飛ぶような甘い物、奢ってあげる」


甘い物、の単語に少しだけ身体を起こした。目の前には笑顔の岳羽がいる。なんかちょっと怖いのは気のせいだろうか。


「聞いていた通り、声、可愛いね」
「!? ちょ、岳羽…」


(ん?なんかバレてる?)



ギリギリアウトだ、馬鹿




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