(ファル(綾)主/色々パラレル) 目の前に居たのは確かにファルロスだった。白と黒の横縞の囚人を彷彿させるあの服と、綺麗なスカイブルーの瞳、泣き黒子の印象的な小さな子供の姿。間違いない。これはファルロスなんだ。ただ、 「この姿はすごく久しぶりだよね」 「おま、綾時?」 「そう、綾時くんです!」 エヘン、と胸を張って自負するそいつ、明らかに綾時だ。ファルロスはもっと、大人で物腰の柔らかい賢しい子だった。そうか、この外見で中身は綾時。なんてアンバランス。 いつかのようにベッドに腰を掛ける子供の仕種に少しだけ懐かしくなった。しかし中身が彼だけに、表情がコロコロと変わって忙しない。君のベッドはいつもふかふかだー、とスプリングを楽しむ姿もファルロスとは異なっていて。 「…幼児化、でいいのか?」 「ファルロスの時が僕の幼少に区分されるならそうなのかもね。だけどそうとも言い切れない」 「何故?」 「ファルロスと僕の自我は違う、かもしれない。お互いに一つの個体として成立していたかもしれないじゃない」 わかる?と、ベッド寝転がって頬杖を付き足をゆらゆらとバタつかせる。その行動はやはり無邪気な子供宛らだ。もしかしたら外見に添うように精神もそれに近くしているのかもしれないと考えてみた。それならやはり、綾時とファルロスはそれぞれの個体として自分の前に存在していたのかもしれない。ならばこの、個体の融合には、なんの意味があるというのだろうか。 立ち尽くしたままの自分に、綾時が近づいてきた。彼の背丈は自分の胸元の辺り。そして手を取られ小さな両手で優しく握りこまれた。 「僕の手、暖かい?」 「ああ、とても」 「これは生きている証拠なんだよ」 綾時が自分を見上げる。あれ、そういえば、何か違う。その姿形からの先入観で意識して見ていなかったけれど、実は彼の瞳は漆黒だった。そして以前よりも赤みをさした肌。何よりも綾時は言った。暖かいこと、つまり体温は生きている証だと。そこまで言われなきゃ気付かないなんて、本当に情けない。でも、だけど、うれしくて。 「何よりもデスの仔だったファルロスには抑揚が無かったじゃない。人に成れたから、僕、こんなに喜んでいるのに」 「ごめん、気付かなくて」 「ほんとにね。一目見て気付いてほしかったよ」 でもそこが、君の大好きな所だから。笑顔になった子供の顔に以前のような生気を感じなかった面影は無い。抱き着いて背中に回る手もじわりと暖かさが滲む。 綾時は綾時だ。死神の子が人に成りたいと願い擬人化した姿でも、死をもたらした救世主のかつての仮初めの姿でもない。あの晩秋の時期を共に過ごしたクラスメイトの望月綾時なんだ。 「ねえ、一緒に寝てほしいな」 「…ん、わかった、いいよ」 「…嬉しいなあ。君とずっと一緒にいられるんだ。君の傍で、君の隣で」 人間は素敵だね。そう言ってくれる綾時にありがとうと囁いた。人の身勝手でお前が産まれたというのに、人を好きでいられるなんてお前は凄いよ、と。だけど綾時は言った。 (デスを創ったものは人間の醜い部分だけれど、僕を創ったものは紛れも無く君からの恩恵だから、僕はそれだけで満足なんだ) 瞳に闇を映したこどもは |