(アイ♀主※主が女体化してます)





「朝起きたらなんか出ててなんか引っ込んでた」
「非現実的でありますね」


全く、本当に、そうなんだ。とりあえず寝苦しいと思ってゴロリと寝返りをうってみたらシャツの首元の隙間から小さな双丘が見えた。体を起こしてみると、今度は下半身についていたものの消失感に気付いた。寝起きの頭が徐々にクリアになっていくのが解ったけど別段狼狽えることもしなかった。困ることもなかったし。
ただこの姿を見られるのはどうかと思って。部屋にだけ響くように彼女の名前を呼んでみたらものの数秒で扉をノックする音がした。ロボットの彼女は、どうやら多少の距離であったなら僅かな雑音も拾えるのでよくこうして呼び出してしまうことがある。だから今回は本当に助かった。


「アイギスなら何か解るかと思って」
「………体温、心拍数、脈拍、何れも異常無し。健康状態についても良好のようです」
「…そう」


こちらをじっと見て、診断結果のようなものを口にしたアイギスもこの異変についてはさっぱりのようだった。お役に立てなくて申し訳ありません、謝る彼女に全く非は無いのでその謝罪は即刻撤回させた。
しかしまあ、今日は運悪く学校のある平日ということで、悠長にもしていられない。あと一時間はあると見積もってもこの突然変異にどう対処するのか。制服に関してはそのまま着てしまっても普段とは大差ない。ただ少し大きくなった程度であるし、胸も……複雑ではあるけど目立つ大きさじゃない。

(ただなぁ…身長がなぁ…)


「靴に中敷きつめたらなんとかなるかな」
「里於さん」
「なに?アイギス」


身長への対処を考えていたところへアイギスに名前を呼ばれたので顔を向けた。今はアイギスの目線が少しだけ高い。僕が元々平均以下だからってなにも更に縮むことはなかったのに。正直少し凹む。
すると何も言わずにアイギスは申し訳ないように現れた右の山をその鋼鉄の手でやんわりと掴んできた。突然のことにひっ、と引き攣った声が漏れたけど、彼女の顔は至極真面目に撫でたり揉んだりしている。流石にこれは、ちょっと、やばいかな。


「触診を、と思いましたが、何も解らなかったであります」
「わかったから、ちょ…!アイギス、やめっ」
「里於さん?」


意志に反してふぅふぅと息を吐かざるを得なくて、ああ僕は今、女になってるんだ、漠然と思った。そういえば声音もオクターブ単位で高くなったようなそうでないような。自分に無頓着だったので元の状態ですら把握してない。それ以前に、アイギスのこの行為が判断能力を鈍らせていた。
やばい、頭くらくらしてきた。これ以上は危ない気がする。なんか、男としても女としてもその度合いが解る。やめさせなければ。アイギスの手に触れてそれを制止するように目で訴えかけた。


「ダメであります」
「何が…?」
「貴女を、白日の下に曝す訳にはいきません。よって本日の登校は控えることをお勧めします」


両手を力強く握られ静かに迫られる。彼女のスカイブルーの瞳はとても綺麗だと思うけど、見間違いで無ければこの時の瞳は迫力かあり凄みがきいていたと思う。なるべく荒立てないようにその勧めを断っても、頑なに拒否される。終いには抱き抱えられてベッドに連れ戻されるところだった。

しかし女子がこんなにも大変だとは。人に簡単に胸を揉まれたりするなんて。自分には揉むほど無いけど。うん、無いけど、別に無くていい。


「………」
「落ち込まずとも、私が責任を持って貴女を貰い受けるであります」
「…どこでそんな言葉覚えたの……」


おおよそ順平辺りなのはわかるけど。
とりあえず今日一日を平和に過ごせたらそれでいいけどうまくはいかないんだろうな。それを想像しただけで背筋がぶるりと震える気がした。

(でもロボットより小さいってどういうことだろう!)



どうしてくれるかお嬢さん




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