(親家と政宗と慶次/現代仕様)





ずずず、ず、と紙パックの中の牛乳が底を尽きた音が屋上に響いた。あれ、もうなくなっちゃった。拍子抜けたような慶次の声だ。軽くなった紙パックをひらひらと揺らしている。
かたや向かい側ではガタイのいい男二人が話を弾ませつつ仲睦まじい様子でじゃれ合っている。いつもの光景なのだが、よくも飽きずに毎日毎日近い距離感で接しているものだと思う。

冷静に、自分の周りに女の「お」の字すらない環境にくらくらとする頭を抱える政宗は、コンビニで買ったサンドイッチを口に含みながらいつもと変わらない日常を過ごしていた。


「元親と家康、仲良いけど仲良すぎないかなー?」
「そうかぁ?」
「そうそう。だって俺と政宗が二人と同じことしたら引くでしょ」


それ、ハグハグ攻撃ー!とのしかかってくる慶次の腹に一発入れて、政宗は尚も悠然とした態度でサンドイッチを口に運ぶ。鳩尾にジャストヒットだったのか、慶次は暫くの間のたうち回っていた。

確かに慶次が言ったように、この二人の距離感はいちいち近すぎている。だけどそれを政宗は別段可笑しいとは思っていなかったし、元親と家康だからこそ自然に見えるのだと思っていた。
当たり前なのだ、二人にとっては。


「…引いていたか?」
「まさか!元親のスキンシップは、少し激しいくらいが嬉しいぞ?」
「家康…!」
「好かれてるって、よく解るから」
「家康ぅ…!!」


ああ、始まった。声に感動を滲ませた元親が、大型犬がじゃれつくように家康の腰回りに抱き着いた。力強いタックルを悠々と受け止めて、擽ったい!と笑い声を上げる家康も流石だ。そこには、やはり入り込むような空間は存在していなかった。
政宗は最後の一口を放り込んで、思わず口から出そうになった「お前らまるでcoupleだな」という言葉と共に飲み下した。まさか、そんな疚しい関係ではないだろうに。


「お前らもなかなか絵になってたぜ」
「やめてくれよ!俺はふわふわで柔らかい女の子が大好きなの!!」
「It doesn't want to be said by you.そりゃこっちの台詞だ」


英語わかんない俺にそんな長文使うなよ馬鹿!キャンキャンと喧しい慶次に更にもう一度鳩尾に入れた。死にそうな男を横目に楽しげに会話をする二人を見て、やはり自然にしか見えないと自分の瞳を疑いたくなる政宗だった。



あなたとマーチ







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