「きーこ。」
「なに?」
「きーこ。」
「なに?」
「きーこ。」
「…。」
「ごめん!謝るから無視しないで!!」
フンッと鼻を鳴らして
わかればいいのよ、わかれば。
なんて顔してるきーこ。
きーこ。
紀子とは古い友人だ。
幼なじみみたいなもの。
天火と蒼世、妃子と私。
同じ犲になるため共に修行した仲だ。
いつからだろうこんなふうに気を使って話すようになったのは…。
昔、罪人討伐の時
妃子をかばって片腕を無くした。
私は後悔なんてしてない
大切な…大切な仲間を守れたんだ。
「ねえ、妃子。」
「なに?」
「私、引っ越すことに決めたの。」
そう告げると申し訳なさそうな顔をする。
なんで?なんでそんな顔するの?
「私の…せいよね。私があの時油断してなかったら…!」
初めて聞く。
私が怪我をしたあとからきーこが自分を責めてるところなんて一度も見たことがなかった。
少なくとも私の前だけでわ。
「ちがうよ、私ね大切な人ができたの。」
そう言って彼から来た文を見せつける。
「とても優しい人よ、お世話になったの。こないだ彼のご両親にも挨拶にいったわ。」
こんな私を受け入れてくれたの。
そう微笑むときーこはつらそうな顔をする。
「それにね、私離れたとしてもきーこ以上の親友はいないと思ってる。腕をなくして大変じゃなかったなんて言わないわ?でも、色々な人にお世話になって感謝のほうが大きいの。」
だから、気にしないで?
初めて見るきーこの涙。
「 名前必ず…ううん、お別れじゃないんだしこの言葉はおかしいはね。 名前、私ねあんたの右腕がなくなったって聞いた時たくさん自分を責めたわ、でももうやめる。 」
そういって涙を拭い真っ直ぐ私を見つめる。
「今度はあなたの元気な子供みせてよね。」
二人だけの約束。
山あり谷ありだけど私達の友情は
なくなることはない。