<三成会長に家庭教師してもらうお話/三成/学パロ>


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「だ、か、ら!私の事はもう放っておいてください!」
「放っておけるか!」

仮にもレディーである私の襟首を掴み、ぶらぶらさせて放してくれないのはこの学校の生徒会長様。
石田三成先輩だ。

「歴史あるこの生徒会に所属していながらその成績…なめているのか」
「いやいやなめてませんよ!」

普段から生徒たちに、異常に厳しく怖いと評判の石田先輩。そんな彼を会長にする生徒会は、まさに猛者の集まりだ。
先輩に負けず劣らず鬼畜な毛利先輩、不良の長曽我部先輩、何歳?っていう黒田先輩、そして熱い熱い真田先輩と、飄々としてよく分からない猿飛先輩。
…まさに猛者でしょう!

ちなみに私はあれです、くじ引き人員。これは誰も雑務をやりたがらない為に作られた、くじ引きで生徒会役員を決めるという、真にふざけた制度。私は約700分の1の確率で選ばれた、生徒会の雑務。

「やっほーお二人方」

襟首を掴まれて逃げられずに涙目になる私と、何て事ない顔でいる石田先輩。
猿飛先輩は生徒会室に入って来てあはー、と間延びした呑気な声を漏らした。

「…猿飛。真田の期末、いくつだ」
「とりあえず全て50点越したから、赤点なしだよ」

うむ!と猿飛先輩の後ろからひょっこり出てきた真田先輩は、食堂のみたらし団子をくわえて嬉しそうである。

「ほら、旦那口の周りが」
「むう」

今やこんな夫婦だか親子だかカップルだかみたいなやり取りも今は和まない。(普段は少し癒されている)

「…真田先輩の裏切り者!!」
「旦那はやれば出来る子だからね」

猿飛先輩に勝ち誇ったような笑みで言われて若干の苛立ちを覚えたが、まあ仕方あるまい。

で、今回風の噂によると補習仲間である真田先輩と長曽我部先輩が赤点を回避したらしい。(何故!)

「つまり赤点は貴様一人…」

ゆらり、あだ名は凶王の彼が私の両肩を掴んで怖い顔ですごんでくる。まさに凶王、逆らう気など微塵も起きない。

「わ、分かりました!私しばらく生徒会を休んで猛勉強してきます!」

よし、我ながらナイスアイデア!
石田先輩から逃れて、尚且つ赤点からも(多分)逃れられる!
忙しい生徒会の活動が私の勉強時間を削ってるのも、理由の一つだと思うし!

「…それは許さん」
「ですよね……って何でですか!?」

石田先輩は不満げに眉を寄せて、頭いくつ分か低い私を見下ろす。
ちなみに威圧感は半端ではありません。
多分この人なら視線で人を殺せる。私が保障しよう!

「頭が悪い貴様が一人で引きこもり、足掻いたとしても、結果は見えている」
「そっ…」

そんな正論言われたら言い返せない…!
猿飛先輩は何がおかしいのか笑っているし、みたらし団子をごくりと飲み込んだ真田先輩は何とも純粋な表情で口を開いた。

「なら三成殿が教えるというのは!?某、三成殿の教え方は大変分かりやすかった思い出がありまする!」

ちょ、妙な事言うのはよせ!万が一!万が一だけど石田先輩が承諾してしまったらどうす「フンッ…良いだろう。今回は私が直々に貴様を指導してやる」うわあああああああ真田先輩ちょっと面貸せ!

「い、いやいやいや!会長忙しいでしょう!?あ、ほら、それなら真田先輩と猿飛先輩に頼みま…」

今度は不満げであり、さらに(見間違いかもしれないが)若干捨てられた狐(何だろうこの表現…)のような顔を見せた石田先輩。そんな反応されたら、もう。

「…お願いします、石田先輩」
「ふん。私が貴重な時間を割いてまで教えてやるんだ。当然、100点を取って来い」

ならば明日から、と勉強の時間を指示する石田先輩はどこか生き生きしている気がした。
嗚呼、願わくば明日から怪我なく生命を維持できますように、と私は涙を呑んで願った。


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