<ひとりぼっち/三成(現パロ)>
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!ヒロインが半兵衛亡くなったことで病んでます
小さな部屋で、小柄な少女と屈強な体格の青年が向かい合っていた。
「苺、ワシはやっぱり、お前の生き方は間違っていると思う」
外から入る光は微かに薄暗い部屋を照らしている。障子から漏れる少しの柔らかい光さえ遮断するように、少女は光から逃げるように。
「私の生き方が正しいよ」
壁の方を向いた少女はどこか上の空でつぶやいた。
「私は一途なの」
*
掠れた声が、消え入りそうな歌を紡いでいる。悲痛な叫びにも聞こえる音階の羅列に、三成は思わず足を止めて近くの部屋に飛び入った。
「苺!」
相変わらず暗い小さな和室には、また相変わらず小さく白く、死んだような目をした少女がいた。
「…」
少女は三成をゆっくりと見据え、歌うのをやめる。静かな部屋。畳にぽた、と液体が落ちる音。
「苺、自傷はやめろと何度言ったら分かる」
「…三成」
自分の持っていたタオルを少女の細い手首に強く巻き付ける。少女は痛みに顔をしかめることもせず、やはりどこか他人事のような表情をしていた。
「半兵衛が好きって言ってくれた歌、歌えないの」
やがて珍しく。少女が自ら言葉を紡ぎはじめた。
「声が出ないの。黒い、汚い、叫びしか出ないの。これじゃあ半兵衛が帰って来れない」
ぐるぐると渦を巻いたような瞳は確かな絶望と恐怖と狂気と悲しみと―。憎しみを含んでいる。
「貴様が歌おうと手首を切ろうと半兵衛様は帰ってこない。そして半兵衛様だって貴様のそんな姿を望んでいない!」
ギッと力んで噛み締めた奥歯が鋭く鳴く。
少女の瞳からは大きな雫がボロボロと零れていた。ふらふら倒れそうになったやつれた身体を、慌ててしゃがんだ三成が慌てて支え、抱きしめる。
「こんな世界大嫌いだよ」
自分の服を濡らす少女の涙は、三成には何故か冷たい気がした。
「半兵衛様と貴様が愛し合ったのも、この世界だろう」
三成の言葉に、少女は苦笑を浮かべつつ、三成の背中に両手を回した。
三成に気づかれぬよう、右手の服の袖口から折りたたみナイフを静かに出し、歌いながら、冷たい手首に刃を突き刺した。
#ひとりぼっち
初/音ミ/ク:Ba/db/y/e
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