<生まれた意味なんて/家康>


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太陽が、今日も明るく空に照っていた。
1人の少女がその空を何処か上の空で見上げながら、刀で目の前の敵を薙ぎ倒していく。
ごつごつと角ばったその場所は、彼女が普段過ごす城とは違った。

「家康様っ!
侵入者は1人、女でした!」
「…女?忍か?」
「兵達曰く、忍ではないと
ただ今1人であっという間に兵を切り倒し、こちらへ近づいています…」

侵入者の知らせをしに、2人の兵が主である家康のもとへ来たのはちょうどその頃。
家康が耳を澄ませると、その場からあまり離れていない所から兵達の悲鳴が響いている。

「どんな女だ?」

聞かれたもう1人の兵は自分の記憶をすぐに辿り、ああっ!と思い出したように声をあげた。

「線の細い小さな女で、鎧は紫…腕に石田軍の布陣と同じ印がありました!」
「…苺か
よし!すぐに皆を引かせて、女をこちらに通してくれ
ワシが相手をする!」
「はっ!」


今まで勢いよく切り掛かってきていた兵達が、敵意は絶やさずも急に引いた。
頬の血を拭いながら、苺は17という年相応の仕草で不思議そうに首を傾げた。まあいい、刀を鞘におさめて彼女は1人の男のもとへと走った。


「やはり、苺だったか
久しいな!」

予想通りの人物に、家康は顔を綻ばせた。多少以前より痩せていたり、髪が短くなっていたりと、短期間に様々な容姿の変化があった。しかし、一番以前と違ったのは。

「覚悟を決めた瞳だな
敵意、憎しみ、―殺意
お前は、何故そんなに変わった?」

家康の問いに、苺は目を見開いて切り掛かった。鋭い刀が家康の手で受け止められ、金属音が悲鳴を上げる。

「三成が、三成を…!」
「…」

ああ、と家康は刀を弾きながら眉をひそめた。この少女の一番は何があっても、三成。

「お前が三成を変えた…!」

小さな体が、潜り込むようにして家康を床に倒した。その上に乗り、刀を構えながら苺は瞳いっぱいに涙を溜める。

「何が太陽だ…!
私達を焼き尽くしたくせして、日ノ本を照らそうなんて言うな!
返せ!三成を…、秀吉様を!!」

大粒の涙はやがて、家康の顔に落ちていった。激情に比例するように涙は止まらず、溢れるばかり。
苺は涙を拭いもせず刀を振り上げ、家康の首を跳ねようと―。

ざくり。
振り上げられた刀は家康の首の真横、地面にかたく突き刺さった。

「苺」
「何で避けないの…!」

刀が無くなった手で、苺はポカポカと家康の胸を叩いた。
やがて起き上がった家康は、泣きじゃくる苺を抱きしめる。苺はそれを拒まずにただ泣きつづけた。

「私は…また3人で、笑いたいだけなの」
「…ああ」
「家康、家康、いえやす、いえ、やす」
「苺」

「昔に、戻りたい…!
出来ないなら、私は…!」


ああ、何故戦国の世に産まれてきてしまったのか。
太陽はいつの間にか雲に隠れていた。濁った灰色の空から降りはじめた雨の雫は、座り込んだ2人を濡らし、冷やしていった。


#生まれた意味なんて
考えたくないよ
(かなしい人生だ)

*
鬱になりそうですね

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