<vicious circle/三成(暴力表現)>


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私が一歩後ずさると、彼は一歩進む。そんな行為が灯の心許ない空間で行われていた。

「苺、家康に会いたいのか」

ああ、どうしてこんなふうになったのか。自問自答を繰り返しながら、ひどくお怒りになられる主を見上げる。

「家康に、東軍につきたいのか…!」

紡がれる一言一言に気管を押し潰される気さえする。息がつまり、心臓が煩わしく跳ね上がった。

「めっ、滅相もございません!
私達、本田一族は先祖代々豊臣家のお力になると心得申しております!」

緊張か、酸素が足りないのか。必死にしぼりだした声は微かに掠れた。

「苺、私はそんなことは聞いていない!
お前の気持ちを聞いている…!」

背中にかたい壁が擦れたのとほぼ同時に、三成様の手が動いて私の左手首をきつくしめた。

「私は三成様に生涯お仕えしたいと…っうあっ…!」

圧迫される手首。骨が軋んで悲鳴を上げる。痛い、痛いと。

「私に嘘をつくのか!」
「嘘なんてついていません!」

ぱきり。
それはあまりに突然で、一瞬。何が起きたか理解できない私に、想像以上の痛みが襲った。折られたんだ、手首。彼の細い腕のどこにそんな力があるのだろう。
三成様の手を見ながら、痛みに負け力が抜ける体はすとんと床に落ちた。

「苺は…嘘などついておりません」

刹那、訪れたのは頭部への痛みだった。すぐに意識は遠くなる。

ああ、そういえば。
昨日も一昨日も、いつからかこんな風にされて、私は逃げようとして。逃げようとして捕まってこうされたんだ。
痛いなあ…嗚呼、もう何が何だかわからない。

「三成、様…私は嘘を、つきました」


暗い部屋のなか、表情を歪めた男が意識のない女を抱きしめる。

「すまない…苺」


そして、女はまた目を覚ます。
逃げなきゃ、と。

*
裏切りが怖い三成と、逃げたいけど逃げきれないヒロイン
タイトルは悪循環って意味です
話が曖昧なのは仕様^p^

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